この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
17歳の寄り道
第25章 【遥編】ノスタルジー
「―――遥?」

どこからか声がした。
きょろきょろと見回すと、父さんが玄関のドアを開けていた。
それは嬉しそうな顔をして。


「父さん、家いたの?…誰かと住んでない?」

「さっき病院から帰って来たばっかりだよ。誰も住んでないよ。来るなら連絡してくれたらいいのに」

「んー…。ホントは寄るつもりなかったから。…でも、気が変わったから来た」

父さんは、こんな優しい顔をしていたんだと初めて知った。
今までで一番喜んでいる顔を見たかもしれない。
家に上がったら、俺がいたころより雑然としていた。これは女呼べねえな…

「家、汚ねー。」

「ははは。今まで遥がやってくれてたんだな」

母さんは実家帰りがちだし、家事も炊事も嫌いじゃなかったから、やってただけだけど。
それより、上機嫌な父さんに戸惑う。

「母さんには言って来たのか?」

「んー…言ってない、かな…」

「また不安にさせるんじゃないか」

そんな、わかったようなことを言うんだったら、離婚しなければよかったんじゃね?
と、喉まで出かかったが、やめた。
言葉を飲み込むのは得意だ。昔から、ずっと飲みこんできたから。


「父さん、つるさきクリニックって知ってる?」

俺のためにお茶を淹れようとしてくれていた父親の手が止まった。

「鶴崎先生?覚えてるのか?」

「昨日会った」

「えっ!?」

あのクリニックに行かないといけなくなった経緯を簡単に話した。父さんは両手を組み、顎を乗せて目を細めて俺の話を聞いている。


「あの時は……本当にお世話になったんだよ。お元気そうで良かった」

「そっか。母さんと入院してたのは覚えてるけど、先生まで覚えてなかった」

「小さかったからな。お前も大変だったろうけど、母さんも同じぐらい大変だったと思うよ」

「………うん」

俺が頷き俯くと、父さんは肘を下ろして呟く。

「まあ、俺が言うなって話だな」


こんなに、悲しそうに微笑む人だったか?
父さんの背中は、こんなに小さかったか?

今まで俺が見えていた世界は、3ヶ月前とは全く違っていた。
/452ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ