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17歳の寄り道
第25章 【遥編】ノスタルジー
「―――遥?」
どこからか声がした。
きょろきょろと見回すと、父さんが玄関のドアを開けていた。
それは嬉しそうな顔をして。
「父さん、家いたの?…誰かと住んでない?」
「さっき病院から帰って来たばっかりだよ。誰も住んでないよ。来るなら連絡してくれたらいいのに」
「んー…。ホントは寄るつもりなかったから。…でも、気が変わったから来た」
父さんは、こんな優しい顔をしていたんだと初めて知った。
今までで一番喜んでいる顔を見たかもしれない。
家に上がったら、俺がいたころより雑然としていた。これは女呼べねえな…
「家、汚ねー。」
「ははは。今まで遥がやってくれてたんだな」
母さんは実家帰りがちだし、家事も炊事も嫌いじゃなかったから、やってただけだけど。
それより、上機嫌な父さんに戸惑う。
「母さんには言って来たのか?」
「んー…言ってない、かな…」
「また不安にさせるんじゃないか」
そんな、わかったようなことを言うんだったら、離婚しなければよかったんじゃね?
と、喉まで出かかったが、やめた。
言葉を飲み込むのは得意だ。昔から、ずっと飲みこんできたから。
「父さん、つるさきクリニックって知ってる?」
俺のためにお茶を淹れようとしてくれていた父親の手が止まった。
「鶴崎先生?覚えてるのか?」
「昨日会った」
「えっ!?」
あのクリニックに行かないといけなくなった経緯を簡単に話した。父さんは両手を組み、顎を乗せて目を細めて俺の話を聞いている。
「あの時は……本当にお世話になったんだよ。お元気そうで良かった」
「そっか。母さんと入院してたのは覚えてるけど、先生まで覚えてなかった」
「小さかったからな。お前も大変だったろうけど、母さんも同じぐらい大変だったと思うよ」
「………うん」
俺が頷き俯くと、父さんは肘を下ろして呟く。
「まあ、俺が言うなって話だな」
こんなに、悲しそうに微笑む人だったか?
父さんの背中は、こんなに小さかったか?
今まで俺が見えていた世界は、3ヶ月前とは全く違っていた。
どこからか声がした。
きょろきょろと見回すと、父さんが玄関のドアを開けていた。
それは嬉しそうな顔をして。
「父さん、家いたの?…誰かと住んでない?」
「さっき病院から帰って来たばっかりだよ。誰も住んでないよ。来るなら連絡してくれたらいいのに」
「んー…。ホントは寄るつもりなかったから。…でも、気が変わったから来た」
父さんは、こんな優しい顔をしていたんだと初めて知った。
今までで一番喜んでいる顔を見たかもしれない。
家に上がったら、俺がいたころより雑然としていた。これは女呼べねえな…
「家、汚ねー。」
「ははは。今まで遥がやってくれてたんだな」
母さんは実家帰りがちだし、家事も炊事も嫌いじゃなかったから、やってただけだけど。
それより、上機嫌な父さんに戸惑う。
「母さんには言って来たのか?」
「んー…言ってない、かな…」
「また不安にさせるんじゃないか」
そんな、わかったようなことを言うんだったら、離婚しなければよかったんじゃね?
と、喉まで出かかったが、やめた。
言葉を飲み込むのは得意だ。昔から、ずっと飲みこんできたから。
「父さん、つるさきクリニックって知ってる?」
俺のためにお茶を淹れようとしてくれていた父親の手が止まった。
「鶴崎先生?覚えてるのか?」
「昨日会った」
「えっ!?」
あのクリニックに行かないといけなくなった経緯を簡単に話した。父さんは両手を組み、顎を乗せて目を細めて俺の話を聞いている。
「あの時は……本当にお世話になったんだよ。お元気そうで良かった」
「そっか。母さんと入院してたのは覚えてるけど、先生まで覚えてなかった」
「小さかったからな。お前も大変だったろうけど、母さんも同じぐらい大変だったと思うよ」
「………うん」
俺が頷き俯くと、父さんは肘を下ろして呟く。
「まあ、俺が言うなって話だな」
こんなに、悲しそうに微笑む人だったか?
父さんの背中は、こんなに小さかったか?
今まで俺が見えていた世界は、3ヶ月前とは全く違っていた。