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17歳の寄り道
第26章 【碧編】夢か幻か
遥が来た。
前は窓からだったけど、今回はちゃんと玄関のドアを開けて。
框に腰掛けて待っていた私の姿を見て、にやっと笑う。

「大丈夫か?足」
「んー。痛い」
「すげー腫れてたもんな…」

そう言って遥は私の前にしゃがみ込む。すると凛太がやってきた。

「はるくん!」
「おっ。凛太、元気になってるな」
「なんできたのー?」
「何でって、姉ちゃんの顔見にきたんだよ。凛太の顔もな」

凛太はすっかり遥に懐き、私なんてそっちのけ。凛太のはしゃぎ声に母が居間から出てきて、その途端、遥の背筋が伸びた。

「遥君、上がって!」

母の笑顔に、遥は「おじゃまします」と一礼した。

私や、村上先生への無礼な態度しか知らなかったが、遥はとても礼儀正しい。
料理もできるし、同じ17歳と思えない面もあって尊敬する。
それに、ハンバーグはとても美味しかった。


居間にあげられたものの、凛太が遥にまとわりつきすぎるので、母が私の部屋に上がるよう勧めた。

「遥君、帰りの新幹線は何時?車で駅まで送るよ」
と母が言った。

「18時ですけど、碧さんも凛太君も大変ですから、バスで帰ります」
「いいのよ。お世話になったんだから。ここからだと乗り継ぎ悪いでしょ。車ならすぐだよ」

私も、母の援護射撃とばかりに口を挟む。

「そうだよ遥、みんなで送るよ。乗って行きなよ」

迷っていた遥だったが、私と母に押されて、申し訳なさそうに頭を下げた。


出発の時間までの1時間は、私の部屋で二人きり。
冷たい麦茶と水羊羹を置いて、母は降りて行った。

いざ二人になると、心なしか、少し気まずい雰囲気…空気を打破したのは遥だった。

「…結愛と会ってるって、なに?俺全然連絡取ってねえよ」
「……だって、寝言で何度も呼んでた」
「マジか。……ん~…あいつの夢、久しぶりに見たしな…」

ちょっと困っているのが分かりながらも、私はイライラが止められない。

「ゆ…結愛ちゃんはいつまでも遥の特別なんだよね」

ヤバい。嫉妬に苛まれて、可愛くないことしか言えない…。
私は遥から顔を逸らして麦茶のグラスを取り、口をつけた。
遥はベッドに腰を下ろし、足を組み直す。

「特別か。そうかもな。初恋だし、すげー好きだったから」

いつもはぐらかす遥が、本心を明かした。
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