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17歳の寄り道
第26章 【碧編】夢か幻か
あの日の、あのタイミングでなければ。

こういう結果にはならなかったのかもしれない。

それとも、いつかはこうなる定めだった?



遥との連絡は、あの日から途絶えてしまった。
何を話しても疑われていると思うと、何も言葉が見つからなくて、伝えたいことも消えてゆく。

分かってほしい気持ちもあったけれど、心をぶつけるにはとても疲れていた。

これから、母と、凛太と暮らして行くこと。
この後、どうなるのか。

家を出ようと思っていたのに、こんな形で義父がいなくなると、今度は母と凛太を放ってはおけなくなる。
遥と一緒にいたい一心で過ごしていたのに、心にぽっかりと穴が開いたようだった。

それでも時々、遥から突然連絡が来たりしないかなと願を掛けることもあった。


今頃、どうしているんだろう。
まだ、怒っているかな。
私のことなんて、信じられないよね…

そうやって遥を思い出していた回数は減り、時間は過ぎ去る。


秋の終わりに、両親の離婚が成立した。
余りにあっさりとした結末に、安堵したと共に拍子抜けした。
早く片付いたのは、金銭的な事を一切求めなかったからだろうと母は言っていた。

父が凛太に会いたがった場合は、応じなければいけないようだったが、私とは一切会わないという約束になった。

義父の部屋はまだ、仕事をしていた机だけが残っている。
荷物は机以外の全てを、母が実家に送った。

何もかもが終わった時に、母は私に「ごめんね」と言った。


もう、捻挫はすっかり治っているし、走る事だってできる。
あんなに聞こえていた蝉の声もしないし、外に出ると白い息がふわりと上がり、緑は枯れ木に変わっている。

冬が来ていた。


「碧?村上先生へのお歳暮、何にしよう」
母が台所から声を掛けてきた。

「先生にお歳暮送るの?コーヒーでいいんじゃない?あ、でも豆からだよ」
「珈琲豆ね。そう言えば、玄関のスニーカーお返ししなさいよ。送ってもいいんだからね」
「うん……」

村上先生の事も…時々思い返していた。

2-Aの担任は堤先生に代わり、クラスのみんなも私も、それに慣れてきていた。
先生は研究所で今、忙しくしていることだろう。

スニーカーのことは忘れてはいない。
あの夏の夢のことも。
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