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17歳の寄り道
第26章 【碧編】夢か幻か
ブーツでざくざくと舗装されていない小道を進み、先生の家に辿りついた。
部屋の電気はついてないか。


ピンポーン…とインターホンを押してみた。
……出ないな。

仕事忙しいのかな…。年末だもんね。

私は、門の前に座って紙袋を膝に置き、ペンを取り出す。
“村上先生へ”と書き、…その先が続かない。

お世話になりました?
スニーカーありがとう?
メリークリスマス?
良いお年を…。うーん。

どれもしっくりこない。
次第に体が冷えてきて、結局“村上先生へ”だけで終わった。


真っ白な息が上がる。
空にはもう冬の星座が広がっていた。

あれは、北極星。あれは、シリウス。
少しなら、星座も覚えた。


「帰ろ…」

紙袋の持ち手を門にひっかけていると、後ろから明るいライトに照らされた。

村上先生の車が帰ってきた。



「わー!村上先生ー!」

両手を振ると、眩しいライトの隙間から、先生の驚いた顔が見えた。
車は行き過ぎガレージに入り、そこまで駆け寄ったら、先生が勢いよくドアを開けて出てきた。


「白川?何してるんだ?こんな寒い日に…」
「何しにって、スニーカーのお礼を言いに来ました」

先生は、私の手にある紙袋を見て苦笑する。中からサンタのブーツが飛び出していた。

「スニーカーはいらないって言ったのに…」
「……でも、返したかったから」
「わかった。ありがとう」


先生は笑っていたが、困っているようにも見えた。
キンと冷える空気の中で、次の言葉が見つからずに、私は先生の瞳を見上げる。

季節が移ろいだせいか、先生の姿を見るのはすごく久しぶりに思えた。
もう二度と会えないような気がしていたから、夢を見ているような気分だ。


「何で来たの?バス?」
「はい」
「送るよ。こんなに暗いし…」

先生はまた、車に乗る。
助手席を指差されて、私もドアを開けた。

「この時間なら、夏はまだ明るかったのに……」
「そうだな」

何を話せばいいのか。お互いが何かを探している気がした。


「………浅野は元気?あれ以降、あいつから連絡もないし、俺からもしてないから」

先生は指を組み、私を見ないで話を進める。

「別れました。自然消滅のほうが近いかな…」
「え?いつ?」
「先生にお世話になった次の日かな…。ちょうど遥が帰る日に……」
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