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17歳の寄り道
第27章 【村上編】冬
「白川。コート貸して」

そう言うと、白川は慌ててコートを脱ぎ、中はゆるりとしたグレーのニットを着ていた。
ニットの上からでもわかる体のラインをできるだけ見ないようにして、コートを掛けた。


ホットココアを入れた。
甘めに作るとやはり喜び、無理をしてブラックコーヒーを飲んでいたのかなと思ったら、微笑ましくなった。

向かい合ってテーブルに着き、白川がマグカップをコトリと置いた。

「…先生のせいじゃないよ。さっきの話」

長い睫毛が伏せられ、瑞々しい唇が開く。


「先生は、私が迫ったから、それに付き合ってくれただけだもん。だから、先生のせいじゃないの」
「……それなら尚更、俺が踏み止まっていたらよかったんじゃないのか?」

そう言うと、白川は首を振った。

「ううん…問題はそこじゃないから」


俺はついていた頬杖を外し、コーヒーカップに口をつけた。

相手を信じきれなくなった浅野の心境はわからなくもない。俺にも経験はある。

そう考えたら……ふと詩織の顔が浮かんだ。
随分思い出さなくなっていたのに、久しぶりに。



「…ごちそうさまでした。おいしかった。先生、ココアいれるのも上手なんだね」

白川の声が空想から俺を引き戻した。
はにかんだように微笑む白川に、自然と顔が綻ぶ。

二人の間に流れる空気は、ゆったりと心地よく、時々、彼女の言葉や仕草に懐かしさやときめきを感じる。

俺があまり話さないので、白川は緊張しているようだった。俺も、話さないんじゃなくて、何を話せばいいのかわからないだけだが。

「先生、サンタさんのお菓子食べてね」
「うん。あ、食べて帰れば?」
「私が食べたら意味なくなっちゃうよ!それに、また満月見たら思い出すって言われちゃう…」

そんなことも、言ったな。

まだ覚えていたのか。

「よく覚えてるなぁ…」と言ったら、
「そんなの忘れないよ」と笑っている。


伸びをして立ち上がり、飲み干したマグカップとコーヒーカップを取り上げ、キッチンに運んだ。

「あっ、私洗って帰るよ」

白川が立ち上がって、俺の隣に来る。

髪の香りが立ち、腕が柔らかく当たった。
それだけで、俺にとっては十分な誘惑になる。

少し距離をとると、白川は不安げに俺を見た。

次タガが外れたら、もう二度と戻れない。
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