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17歳の寄り道
第27章 【村上編】冬
「…避けないで。」

白川は漆黒の瞳を涙で潤ませて、俺に抗議した。

好きな女に泣かれるとさすがに堪える。
が、「……避けてないよ」と平然と嘘で返した。


俺の返事が気に入らなかったのか、彼女は興奮しながらまくし立てた。

「私のこと迷惑なんでしょ。もう迫ったりしないよ。そんなことするためにここまで来たんじゃないよ。先生、元気にしてるかなあってずっと思ってたからだよ。
でも、先生は私になんか会いたくなかったよね……」


白川は、緊張していたのではなく、俺の態度で傷ついていたのだ。




「……違う、聞いてくれ。好きだよ」






誤解を解くために飛び出した言葉は、ずっと封じていたそれだった。

白川は俯き、眉間に皺を寄せて、大粒の涙を零した。


「…お前が、生徒だった時からだよ。浅野と付き合っていた時もだ。軽蔑するなら、していい」


そう言うと、白川は首を振り、涙を拭う。



俺の浅野への裏切りは、一生許される事ではない。

しかし、伊達に歳は食っていない分、白川の気持ちが今どこにあっても、まだ浅野にあったとしても、それごと受けとめるぐらいの気概は持っている。

また、不安で揺れているのなら、今度こそ俺といたらいい。
逆に、「そんなつもりじゃないし!」って言うのなら、盛大に振ってくれたらいい。

どれを伝えれば白川が泣きやむのかわからずに、ただ隣で、涙を零す彼女を見つめていた。

「………」


俺の視線に気づいた白川が顔を上げる。
涙に濡れた瞳を見ると、胸が苦しい。


少し見つめ合った僅かな時間のあとすぐ、その柔らかい唇に誘われるようにキスをした。
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