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17歳の寄り道
第28章 【千晴編】誰にも言えない
ぐさりと心がえぐられる。
そんなこと、私が知る前からずっとあった事実なのに。

見えなかっただけで、私が生まれる前から先生はずっと結婚していた。
今更、奥さんの話を聞いて、藤田さんが息子だと聞いてショックを受けているなんて、バカげたこと、なのに。

「千晴ちゃん、顔色悪くない?」
「……ううん、ちょっと車に酔ったかな…」
「ごめんね、運転荒い?」
「違うの、山道だから…」

藤田さんの運転はとても優しくて、乗せている人への心遣いまで感じる程だ。

「藤田さんは、お母さん似…?」
「自分ではわからないけど、見た目は母似みたいだよ?」

藤田さんの、穏やかな奥二重をした顔のつくりは、幾度となく見つめて恋い焦がれたあの人の面影はない。

だけど。
低めの声、後ろ姿や歩き方、振る舞いは藤田先生そのものだ。

なんで気づかなかったんだろう。
そして、私は何をやっているのだろう。


暗くなった冬空の下で、藤田さんの車は止まった。
夏休みに藤田先生が止めてくれた、その場所で。

「千晴ちゃん。また会える?」
「…………」

会える訳がない。
父親にしつこく迫って、毎週人に言えない行為をしている私が。

「今日はありがとうございました。楽しかったです」

藤田さんの質問には答えずに、車を降りた。
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