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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
本当は、こんな風に、先生に触れたい。
埃っぽい体育倉庫での背徳の行為より…手を繋ぎたいし、目が合った時は微笑みかけてほしい。

先生の腕に頬を擦りつけて、目を閉じる。

本当は、恋人のようになりたかった。
でも、それを望むと先生は拒絶する――。


電車に乗り換えて、駅に着いた。
マフラーを巻き直していると、先生が鞄を持ってくれた。

「え…」
「改札出たら自分で持て」
「わ、わかってますよ……でも……ありがとうございます」

マスクの中からお礼を伝えたら、藤田先生はフッと笑う。
サイボーグみたいな先生の人間らしい部分に触れてしまうと、あんな、やましい繋がりでも途絶えさせたくなくなる。誰かを傷つけても離したくないとさえ、考えてしまう。

改札を出て振り返り、先生も続いて出てきた。

「ありがとうございました」

両手を伸ばして、鞄を受け取った。




「ち、千晴、保健室行く……?」
「(大丈夫、声が出ないだけだから)」
「何て…?あっ、筆談する?」

お昼時間には、完全に声が出なくなってしまった。碧とお弁当を食べていても、何も話せない。碧が心配そうに声を掛けてくれるけれど、答えられない。

「千晴……大丈夫?これやるよ」と、イケメンキーパー東野涼太も心配そうに、のど飴をひとつくれた。

「白川もひとつどうぞ。ミルク味だよ」
「わ、ありがとう東野君」

なんだ…私の心配してるフリして碧狙いかよ…。いちゃいちゃするなら余所でやってくれ。と、体調不良で、心の声までも荒れてくる。

「次の体育、休む?外周マラソンだよ」
「保健室行ったほうがいいんじゃない?」

そうだ。5時間目は体育。
先生は私が風邪だと知ってるけれど……なんか、休みたくない。

マラソンは出る、とジェスチャーすると、涼太と碧は顔を見合わせていた。
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