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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
「え、なに…わた……」
んんっと咳払いをすると、かろうじて声が出た。

「歩道で倒れたんだよ、藤田コーチがここまで連れてきてくれたよ。土井先生は用事で出てる」

サッカー部員はみんな、何故だか先生を藤田コーチと呼ぶ。
慕ってるんだか何なんだか分からないが、授業と変わらない鬼コーチではある。

それより、藤田先生が連れてきてくれたって…!?

「涼太、今、何時?」
「ホームルーム終わって、掃除の時間。俺はこれから図書当番」
「ああ。碧と?」
と聞くと、涼太は「そうだけど」と赤面している。……碧も罪な奴だ。

「私も体育委員……」
「あ、それだけど、コーチが『今日は来なくていい』って言ってたよ」
「え?」
「『須賀に伝えて来てくれ』って言われたんだ。そんでこれ、コーチから。お見舞いだって」

涼太から渡されたのは、いちご牛乳のパック。……まだ冷たい。


無果汁のいちご牛乳には、いちごそのものは入っていない。
ホンモノのいちごではないけれど――。

先生が、これを私に……。

「……ありがと。涼太」
「コーチにお礼言って。じゃ、白川待たせてるから行くわ」
「ん」

ベッドの上でストローを挿しながら、慌ただしく出て行く涼太に手を振る。


……先生。

私、やっぱり、先生を好きな気持ちを消せない。
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