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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
とろけるように甘いいちご味が口を満たす。
すっきりとはしない、まったり味に苦笑した。

ぽすんとベッドに横たわり目を閉じると、グラウンドから聞こえる掛け声や、音楽室からの音色が耳の中に流れてくる。
手にはいちご牛乳のパック。これ、先生が買ったのかな……。涼太が買ってたりして。
パックを握りしめてまた眠りに落ちると、しばらくして養護の土井先生が戻ってきた。

「具合どう?目が潤んでるかなあ。検温しようか」

土井先生はてきぱきと体温計をくれて、体を起こして測った。

「37.9度でした」
「あら。これからまた上がるかなぁ。どうする?帰れそう?」
「はい。大丈夫です」

私はコートを着込み、鞄を肩に掛けて、土井先生にお礼を言い保健室を出た。
うー、お腹いた……。風邪に加えてこれもきつい……。

廊下の角のゴミ箱が目に入り、手にしていたいちごパックを確かめる。
記念に持って帰りたいぐらいだけど、それは違うか……と、名残惜しみながらゴミ箱に入れた。
ふらふらと下靴に履き替え、暗くなった空を見上げながら門を出た。

電車に乗り、バス停まで辿りつく。
チリチリと、もうすぐ電球が切れてしまいそうな音をさせながら寂しい照明がついた、そんなバス停。
マフラーをしっかりと巻いて鼻をすすり、ぼけーっとしていたら、隣に背の高い人が立った。
ぼんやり、黒眼だけをその人に向けたら、目を疑う人物だった。

「……ふっ…」

藤田先生!
先生は私を見下ろして静かに口を開く。

「…………今帰りか」
「はい……先生も……っ」
途中で声が出なくなり、先生が「しゃべらなくていい」と言った。

あ、いちご牛乳のお礼……。
言いたいけど、胸がドキドキして落ち着かないし、声も出ないし、何も言えない。
もじもじとしているうちにバスがやってきて、先生と私は一番後ろの席に座った。

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