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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
私の方が早く降りるので、先生が奥に座る。
私も座ろうとしたら、ふらりとよろめいてしまい、先生の手が私の腰を支えた。

「――あ、すみません」
囁き声しか出せなくて、先生の耳元に唇を近づけて謝った。先生は不機嫌な顔で「気をつけなさい」とだけ答えた。
あんなところも触ってもらう仲なのに、とても他人行儀。

そして、バスが走り出すと、先生はイヤホンを取り出して装着した。
眉間を顰めて目を閉じている先生を、おそるおそる見つめる。
またピアノ聴いてるのかなぁ。

「先生……いちご牛乳、ありがとうございました。」

そう言ってみたけれど、先生の表情は何も変わらなくて。イヤホンをしてるし、私はマスクしてるし、このかすれ声じゃあ何も聞こえてないようだ。

「先生、大好き。」

全然聞こえていないのが面白くなってきて、調子に乗って先生に囁いてみた。

「先生も、私のこと、好きですか?」

「――……何なんだお前は」

先生の目が開き、ぎくりとして体を離した。今のが聞こえていたのかと慌てたが、そうでもないようだ。

「寝てなさい。着いたら教えてやるから」
「はい……」

先生はまた目を閉じてしまった。

諦めるとか言いながら、相当痛いな、私……。
唇をきゅっと噛み、バスに揺られた。

「先生、私もう、つきまとうのやめます……」

聞こえているのか、聞こえていないのか。
先生はバス停につくまで、目を閉じたままだった。
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