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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
「起きろ」と低い声がした。
はっと目がさめる。先生を見ていたはずなのに、いつのまにか夢の世界にいた。バスの揺れがまたいい感じに眠りに誘われる。
「えっ、もう……着い…」
私が慌てて立ち上がったら、くくっと笑う声がした。
「まだだ。落ちつけ」

笑ってる……。かわいい。
貴重な笑顔をじいっと見ていると、先生はすっと笑顔を消してしまった。


次の日は結局学校を休んだ。熱が下がらなかったのだ。風邪で休むのなんて久しぶりすぎて、コドモみたいだ。

「はい、今日は休ませます。……はい、はい、よろしくお願い致します」
担任の堤先生と連絡を取る母を見ながら、雑炊をふうふうしながら口に運ぶ。母は誰もいない壁にぺこぺこと礼をしながら電話を切った。
「お大事にって仰ってたわよ。ママ、お買い物行ってくるから。ちゃんと寝てるのよ」と言われ、こくりと頷いた。

ベッドでごろりと横になる。
雑誌も読む気しない。スマホも今はいらない。
こんなに暇だと、先生の顔が浮かんで会いたくなる。

……諦める決意はどこに行った?
ちょっと優しくされたからといって舞い上がって。

あの人、藤田さんのパパだから!
こんなこと誰かに知れたらタダじゃ済まない。奥さんも悲しむ。
先生だって、仕事を奪われる。私だって……。

……私は、何かと引き換えに先生が手に入るなら、本望だけど。
そんな事は叶わないとわかっているからこそ、願ってしまう夢なんだろう。
どんなに好きでも、泣いても、叶わないのだ。この恋は……。


翌日、熱は下がっていて、普通に登校した。
藤田先生はバスには乗っていなかった。
時間がずれたのかと思っていたが、朝先生が職員駐車場から歩いてくるのが見え、車で通勤してきたようだった。
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