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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
ドアを開けて階段を降りる。
先生が追いかけてこないのが答えだ。私の一人相撲はあっけなく終わった。
先生のイヤホンの上からかすれ声で囁いた時とは違い、今はしんと静まり返っているし、さっきのはさすがに先生も聞こえていたはずだ。

風が吹いて、プリントがばさっと音を立てて翻る。
終わった。終わった。フラれた!


音楽室に着き、カラカラとドアを開けた。
「須賀先輩、風邪大丈夫でしたか?」
仲良し1年女子に労われ、無理矢理テンション上げて答える。
「あー、もう全然元気!練習しよっと!」
「あら!須賀さん、張り切ってるわね!いい事だわ!」

1年女子の背後で顧問の斎藤先生がめずらしく褒めてくれた。 
音楽の先生ってことは、藤田先生の奥さんもあんな感じ……?
いや、斎藤先生はクセ強すぎか。

……はあ。
終わったのに、まだ考えてる。

終わりにするって言ったのに。
先生は、最後まで何も言ってくれなかった。
乙女が体張りまくって、なけなしの体を差し出しても、先生の心は最後までわからなかった。



部活が終わり「お疲れさまー」と声を掛け合いながら、どっぷりと暮れた空の下、クラリネットの入ったバッグを肩に掛ける。
サッカー部も練習が終わったようで、ライトの下で部員たちが帰る支度をしていた。
……藤田先生はいない。と、無意識に探してる自分にパンチを食らわせたい。

「あ、千晴ちゃん!?帰っちゃうの!?」
誰だかわからないサッカー部の男子が駆け寄ってきた。
その後ろで涼太が立ち上がり、「体育館裏、忘れんなよ!」と言う。

やっぱり涼太も手紙の内容知ってんじゃん!
何?知らないうちに私、バツゲームに付き合わされてんじゃないでしょうね。

「なんか行きたくないんだけど」
「いやいや!ミウ待ってるから行ってやって!」
と、誰だかわからない部員が言う。ミウって三浦君なの?
え~。なんなの~。

「なんか変な展開やめてよね……」
「変じゃねーから!行って!頼む!」

サッカー部たちの勢いがすごいので、一緒に帰ろうとしていた後輩を先に帰し、体育館裏に行くことにした。

何か賭けてやがったら、涼太たちブン殴ってやる……。
そう思いながら、体育教官室の前を駆け抜け、体育館裏へ向かった。
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