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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
「――あ、須賀さん」

暗いし寒いし、何なんだーっと思いながら角を曲がると、むくりと人影が立ち上がった。
サッカー部のさわやかユニフォームを着た、三浦君が本当に待っていた。

「ごめんね、呼び出して……」

三浦君は俯きながら鼻を擦り、緊張の面持ちだ。
うう。この独特な空気……!

「あ、話って……?」

白々しく用件を聞くと、三浦君は私に向き直って拳を握り締め、結構なボリュームで「付き合ってください!」と言い切った。


……。

「…………あの……」
どう断ろうか考えていると、後ろから「うおおおお!」とどよめきが起こった。

「千晴ちゃ~ん!オッケーしてやって!!」
「頼む―!」
「ミウ、ずっと好きだったんだってー!」
「千晴ー!」

悪ふざけとしか思えない援護射撃にギョッとして振り向く。涼太もしれっと混じってんじゃん!
三浦君はそんなギャラリーに臆することもなく、一歩踏み出して真剣な表情で言った。

「……あいつらの言ってるのはホントだよ。ずっと好きだったから、友達からでもよろしくお願いします!」

え……えっと。

病み上がりの私は、くらくらしながらその場に立ち尽くした。
三浦君の悪い噂は聞かないし、いい人かもしれないけど、それとこれとは別で、この演出ではイエスもクソもない。

「友達ならいいけど、つきあうのは……」


すると、涼太たちが何かを見てわっと逃げて行くのが見えた。
えっ、何何?ちょっと、置いてかないで……!

「お前ら、何を騒いでる!早く帰らんか!!」

地響きのような怒号で、藤田先生が現れたのがわかった。
「やべ、コーチ……」と、三浦君も情けない声を出している。

「行こう、須賀さん」
「えっ、ちょっと待って」
「走ろう」

三浦君は私の手を取って走り出し、冷たく睨む藤田先生の前を二人で通り過ぎようとした。

「コーチ、さようなら」
「さ、さようならっ」

かろうじて先生に挨拶をしたけれど、藤田先生は怖い顔をしたままだった。
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