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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
三浦君はそのまま数駅乗ってゆくので電車の中で解散になる。

私はバス停のある駅で電車を降り、とぼとぼと歩いた。マフラーをしっかりと巻き直し、クラリネットのバッグをよいしょと担ぐ。停留所のランプはついに電球が切れてしまっていた。
チリチリとも鳴らなくなってしまって、物悲しかった。
まるで私の恋のようだ。

私が言えたことじゃないけれど、三浦君もこんな気持ちなのかな。
私もバッサリ、ぐさりととどめを刺してくれないだろうか。
先生のことだから、「俺の態度を見ればわかるだろう」とでも思ってるのかなぁ。
察してちゃんなのかな。

……ああ、また先生のことを考えている。
どれだけ繰り返すんだろう。

もう、やだなあ。
もう、本当にやめたい。好きじゃなかった時の自分に戻りたい。
私の心から先生を追い出してしまいたいのに……。

「腰痛い……」

生理痛で痛む腰を擦っていた、その時。
ロータリーに一台の車が入ってきた。

……なんか、見たことある、あの車。
マフラーに顔半分が埋もれていたので、指で押さえてその車をよく見る。
暗いから、はっきりとはわからないけれど、あれは――――。

その車は私の目の前に止まり、黒いジャージを着たドライバーは、「乗れ」とジェスチャーをする。

「……先生!?」

何で?
何で……!

逸る心を抑えながら、助手席に乗り込む。

「先生、何で……」
「知らん。シートベルトしろ!」
「な、何で怒ってるんですかっ。知らんって何ですか」

手が震えてうまくつけられない。ガチャガチャと慌てていると、先生が覆い被さるようにしてつけてくれて、かあっと顔が熱くなった。

「……少し時間あるか。家には届けるから」

先生は、私に一瞥もくれることなく車を発進させた。
カーステレオから聞こえてきたのは、管楽器の楽曲ばかり。ブラスバンドで演奏する馴染みのあるものもある。

「あ、これたなばただ…」
夏のコンサートで演奏した曲。
先生はハンドルを握りながら「最近はずっと聞いてる」と、低く呟いた。
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