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17歳の寄り道
第30章 【結愛編】結愛の春休み
撮影が終わり、ヘアメイクさんにメイクを落としてもらう。
「結愛ちゃん、本当に美人さんだね。そういうお仕事は興味ないの?」
そう言うお姉さんこそきれいな人だけれど、私は目を閉じてコットンでアイメイクを取ってもらいながら、「学校に通うだけで精いっぱいです」と抑揚のない声で答えた。
モデルができるほど身長もないし、多少ちやほやされたって、私には何もない。
その時、「結愛、風俗嬢になったらナンバーワンになれんじゃね?」と、冗談で先輩が言っていたのを思い出し、お姉さんに気付かれないように溜息をついた。
まだ、何かの拍子に先輩のことを思い出してしまう。それはもう、苦痛でしかなかった。
お姉さんとメイクルームを出ると、カウンターでオーナーと春乃さんたちが、パソコンの画面を見ながら話していた。
「見てみて。すごくきれいに映ってるよ」
艶やかな着物を纏ってパソコンのディスプレイに映っている自分を見ていると、自分じゃないような気がしてくる。
「綺麗に撮れてるじゃないか。じゃあ親御さんに連絡するよ」
全員「え?」と 、春乃さんに視線が集中した。
「まだ高校生だからね。順番が逆になったけど、親御さんに承諾を得てから使わなきゃ、筋が通ってないだろう」
「ええ、春乃さん、先に了承得てなかったの?そりゃだめだよ」
オーナーも弱り声で、アシスタントさんたちも苦笑い。
だけど、春乃さんは外野の声もまるで気にせず、プリントアウトされた一枚を私に差し出した。
「ほら、この写真をよく見てみなさい。小娘にはまだ分からないだろうが、これは格別にいい着物だからね。この世に一点しかないものなんだよ」
薄い紅色の、雄大な柄が入った振袖。
私の髪も顔もプロのヘアメイクで、いつもとは全然違って美しい。もちろん、着物が圧倒的に美しいのだけど、この写真から目が離せない。
「きれい…………」
「だろ?双葉の三代目の腕は確かだよ」
どうやらオーナーは三代目らしい。春乃さんが、目尻の皺を深くしてにっこりと微笑んだ。
こんな私でも、何か価値のあるように思える、そんな力のある写真だった。
「結愛ちゃん、本当に美人さんだね。そういうお仕事は興味ないの?」
そう言うお姉さんこそきれいな人だけれど、私は目を閉じてコットンでアイメイクを取ってもらいながら、「学校に通うだけで精いっぱいです」と抑揚のない声で答えた。
モデルができるほど身長もないし、多少ちやほやされたって、私には何もない。
その時、「結愛、風俗嬢になったらナンバーワンになれんじゃね?」と、冗談で先輩が言っていたのを思い出し、お姉さんに気付かれないように溜息をついた。
まだ、何かの拍子に先輩のことを思い出してしまう。それはもう、苦痛でしかなかった。
お姉さんとメイクルームを出ると、カウンターでオーナーと春乃さんたちが、パソコンの画面を見ながら話していた。
「見てみて。すごくきれいに映ってるよ」
艶やかな着物を纏ってパソコンのディスプレイに映っている自分を見ていると、自分じゃないような気がしてくる。
「綺麗に撮れてるじゃないか。じゃあ親御さんに連絡するよ」
全員「え?」と 、春乃さんに視線が集中した。
「まだ高校生だからね。順番が逆になったけど、親御さんに承諾を得てから使わなきゃ、筋が通ってないだろう」
「ええ、春乃さん、先に了承得てなかったの?そりゃだめだよ」
オーナーも弱り声で、アシスタントさんたちも苦笑い。
だけど、春乃さんは外野の声もまるで気にせず、プリントアウトされた一枚を私に差し出した。
「ほら、この写真をよく見てみなさい。小娘にはまだ分からないだろうが、これは格別にいい着物だからね。この世に一点しかないものなんだよ」
薄い紅色の、雄大な柄が入った振袖。
私の髪も顔もプロのヘアメイクで、いつもとは全然違って美しい。もちろん、着物が圧倒的に美しいのだけど、この写真から目が離せない。
「きれい…………」
「だろ?双葉の三代目の腕は確かだよ」
どうやらオーナーは三代目らしい。春乃さんが、目尻の皺を深くしてにっこりと微笑んだ。
こんな私でも、何か価値のあるように思える、そんな力のある写真だった。