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17歳の寄り道
第30章 【結愛編】結愛の春休み
三人一斉に壁掛け時計に注目する。

「どうなんだろ……えへへ」

……間に合わないかもしれない。

「えへへじゃねえよ。ばあちゃん、結愛送ってくるわ」

遥は舌打ちしながらメットをひとつ取り、私の腕を掴んで歩きだした。
春乃さんは、慌ただしく出て行く私と遥を見ながら、「今度はご両親に伝えてから来るんだよ」と言ってくれた。

遥にぐいぐいと引っ張られながら「今日は、本当にありがとうございました!」と春乃さんに挨拶をし、とめてあったバイクの前まで行った。


久しぶりに見た遥は、また背が伸びていた。

「なんでいつもいきなり来んだよ。今度は連絡してから来いよ。俺も今バイトから帰ったばっかりだしよ。事前に言ってくれたらちゃんと空けとくから」

怒りながらも落ち着いた物言いに、こくりと頷いた。ボコっとメットを被せられ、遥もシートから取り出して被る。
懐かしいこの作業。遥の後ろに乗るのは初めてだけど、このバイクは私も知っているし、バイクの二人乗りは初めてじゃない。

「まだ乗ってるんだね、このバイク……」
「ああ。かっこいーからな!乗れるまで乗るよ」
「一途だね」
「あー。そーかもな」

私が困らせるようなことをしても、いつも優しい遥。
久しぶりに会っても、遥だけは私を拒絶しないで受け止めてくれる。

シートに跨り、細いお腹に手を回して、ぎゅうっと抱きついた。

「ちゃんとつかまっとけよ」

この人がこんなに温かかったことを、なぜ私は気付けなかったのかな。

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