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17歳の寄り道
第31章 【碧編】碧の春休み
急に手を離されてトレイが揺れ、コーヒーの紙コップが床に落ちた。
拾うために身を屈めると、結愛ちゃんが頭上から言い放った。

「あんたずるいのよ!傷抱えてんのはあんただけじゃないのよ。自分ばっかり不幸だとか思ってる奴が大嫌いなの!つまんない女のために遥だって振りまわされて……どうせ振りまわすなら、放ったらかしにしないでよ!遥だってまだ、あんたのこと全然忘れてないのに……!」

カップを片手に、跪いたまま見上げると、結愛ちゃんは歯を食い縛り、涙を堪えていた。
唇はわなわなと動き、目を見開き私を睨みつける。

「遥が悲しいのはどうしても嫌なの。あんたなんてキライだけど、遥が悲しい方がいやだ……」

綺麗な顔が涙に歪み、ストレートな感情が私を貫く様にぶつかってきた。
きっと、嘘のつけない真っ直ぐな子なんだ。
泣いている結愛ちゃんにハンカチを渡すと、「いらない」と首を振られた。

「あのね。泣きながら言う結愛ちゃんだって、ずるいと思う!」

私も半ばむきになって、結愛ちゃんの涙をごしごし拭いた。

「やめてよっ肌荒れるでしょっ。それに、泣き落としじゃないもん!勝手に涙出るんだもん!」
「肌なんか荒れたって治るよ」
「……あんたって結構図太いよね」

小林先輩にも言われたな。「図太い女」だって……。


私たちの応酬に、周りの人たちもちらちらと視線をくれていたが、ハンカチ合戦で仲直りしたと思われたのか、テラス席の雰囲気はいつものように戻る。
時計を見ると、さすがにもう帰らなくてはいけない時間。
凛太は寝ているだろうけど、洗濯も残ってるし、お母さんも疲れてるだろうから……。

「帰らなきゃ。出ようか、結愛ちゃん」
「ん……」

泣いて溜飲が下がったのか、それとも私に心を許してくれたのか(それはないか)、すっかりおとなしくなった結愛ちゃんの手からコーラのカップを取り、コーヒーカップと一緒に仕分けをして捨てた。
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