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17歳の寄り道
第31章 【碧編】碧の春休み
バス停まで歩いていると、握りつぶされた煙草のソフトケースがコンビニ前に落ちていた。

またポイ捨てか……。マナーのない人が多いんだから。
コンビニのゴミ箱に捨てに行こうとそれを拾うと、結愛ちゃんが私の手元を見て立ち竦む。

「ん?どうしたの?」
「――なんでも、ない」

煙草?
あ。これ、小林先輩の銘柄……。
私もこの深い青色は覚えている。

「せっかくだから私も聞くけど……結愛ちゃんはさ、小林先輩とは大丈夫なの?」

余計なお世話であることは承知の上で尋ねた。あのいかがわしい動画は私も目にしている。

「もう終わったのっ。もう……思い出さないようにしてるの。余計なこと聞かないで、あんたは敵なんだから。敵には話したくないわ」

そう言いながら、結愛ちゃんは美しい二重の瞳から涙を落とす。

いつも、小林先輩の記憶の欠片に触れては涙しているのかな。
きっと……幸せなだけの欠片ではなく、重く苦しい足枷にもなっている。私に真実はわからないけれど、結愛ちゃんの涙はそう物語っているように感じ取れた。

私のハンカチでそっと目元を拭く結愛ちゃんは、見惚れるほど愛らしい。

泣いてても怒ってても、こんなに可愛いのなら、遥が好きになってしまう気持ちもわからなくもないなあ……。
それに、たぶん、とても情に満ちた子だ。
……ちょっと怖いけど。


「私は……敵でも、心配はするよ。私だって結愛ちゃん好きじゃないけど、不幸になれなんて思わないもの」
「さすが優等生キャラだね。偽善全開で疲れない?」

泣きながらでも減らず口は続く。
偽善全開か。ふふふ。否定もしきれずに笑ってしまう。

今まで、人の顔色を窺い、人が望むように行動することで安心していた。間違わないように気をつけながら。
それを偽善と呼ぶのなら、私は偽善の塊だと思う。

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