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17歳の寄り道
第33章 【東野編】高校卒業、東野涼太
「東野君?」
「あ、じゃあ。またね。部活行ってくる」
「うん」
恥じらい気味に笑顔を見せる白川。
俺のことを好きなんじゃないの?
目が合うと必ず微笑んでくれる。
俺はいつ白川に告白しようか、そればかりを考えていた。
急がないと盗られてしまう気がしていた。
――そう。嫌な予感はしていた。
ある朝、白川と浅野が二人で登校してきたのを、俺は目の当たりにしてしまった。
俺はいつもと変わらず白川に手を振ったが、顔を引きつっていたかもしれない。よりによってそいつなのかと。
浅野は俺に気付くとすぐに離れて行った。
「おはよ、…浅野と一緒に来たの?」
「うん」
笑顔で答える白川に、俺は少し苛立った。
あいつだけは嫌だ、あんな、人をバカにした奴。
俺は部活も勉強も精一杯食らいついていっているのに、あいつはロクに授業も受けていないのに、村上は面倒事に関わりたくないのか、浅野には何も注意しない。
その上、成績だけはいい。ありえないだろ。漫画かよ。
白川の事も成績の事も、それが醜い嫉みだとは気付かないまま、ただただ浅野が憎らしかった。
なのに……
転校する前に、あの浅野が、俺に電話で懇願してきた。
白川の連絡先を教えてほしい、と。
プライドも金繰り捨てたような浅野に、同情したのがまずかった。
俺の恋はあっさりと破れた。しかもオウンゴール。
「おーい、涼ちん、帰るわ」
「あ、……お、おう」
浅野の前で思いっきり回想に耽っていた俺は、慌てて立ち上がる。
「え?送ってくれんの?いつも『じゃあな』で終わりなのに」
「麦茶取りに行くだけだよ」
二人で階段を降り、浅野は俺の母親に「お邪魔しました」と挨拶をする。意外と礼儀正しい奴だ。
こいつも……白川に未練があるんだかないんだか知らねえが、今度こそ俺が。
悪いが、抜け駆けさせてもらう。
「じゃあな~。また来週来るよ。ジャンプ読みに」
「ああ……」
俺の生返事に、浅野はメットを被りながら、曇りのない瞳を向けて言った。
「別に、俺に遠慮しないでいいから。会いたかったら会えば」
「――えっ?」
「碧だよ。じゃあな。また来週」
フルフェイスのヘルメットでは表情はわからないが、バイクは走り出し、俺はその場に立ち尽くしていた。
「あ、じゃあ。またね。部活行ってくる」
「うん」
恥じらい気味に笑顔を見せる白川。
俺のことを好きなんじゃないの?
目が合うと必ず微笑んでくれる。
俺はいつ白川に告白しようか、そればかりを考えていた。
急がないと盗られてしまう気がしていた。
――そう。嫌な予感はしていた。
ある朝、白川と浅野が二人で登校してきたのを、俺は目の当たりにしてしまった。
俺はいつもと変わらず白川に手を振ったが、顔を引きつっていたかもしれない。よりによってそいつなのかと。
浅野は俺に気付くとすぐに離れて行った。
「おはよ、…浅野と一緒に来たの?」
「うん」
笑顔で答える白川に、俺は少し苛立った。
あいつだけは嫌だ、あんな、人をバカにした奴。
俺は部活も勉強も精一杯食らいついていっているのに、あいつはロクに授業も受けていないのに、村上は面倒事に関わりたくないのか、浅野には何も注意しない。
その上、成績だけはいい。ありえないだろ。漫画かよ。
白川の事も成績の事も、それが醜い嫉みだとは気付かないまま、ただただ浅野が憎らしかった。
なのに……
転校する前に、あの浅野が、俺に電話で懇願してきた。
白川の連絡先を教えてほしい、と。
プライドも金繰り捨てたような浅野に、同情したのがまずかった。
俺の恋はあっさりと破れた。しかもオウンゴール。
「おーい、涼ちん、帰るわ」
「あ、……お、おう」
浅野の前で思いっきり回想に耽っていた俺は、慌てて立ち上がる。
「え?送ってくれんの?いつも『じゃあな』で終わりなのに」
「麦茶取りに行くだけだよ」
二人で階段を降り、浅野は俺の母親に「お邪魔しました」と挨拶をする。意外と礼儀正しい奴だ。
こいつも……白川に未練があるんだかないんだか知らねえが、今度こそ俺が。
悪いが、抜け駆けさせてもらう。
「じゃあな~。また来週来るよ。ジャンプ読みに」
「ああ……」
俺の生返事に、浅野はメットを被りながら、曇りのない瞳を向けて言った。
「別に、俺に遠慮しないでいいから。会いたかったら会えば」
「――えっ?」
「碧だよ。じゃあな。また来週」
フルフェイスのヘルメットでは表情はわからないが、バイクは走り出し、俺はその場に立ち尽くしていた。