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17歳の寄り道
第35章 【千晴編】24歳、須賀千晴
事務室は独立して学内入口に配置され、その上階に職員室がある。

私のメイン業務は庶務、雑用。郵便物の振り分け配布に電話応対、来客応対。

外部からの受電や保護者との接点は少しあるものの、生徒との関わりはほぼゼロ。

もっと難しいことを求められてるのかと思ったので安堵した。
バリキャリ女性は素敵だなとは思うが、私にはなれそうにもないのでちょうどよかった。

何しろ、事務室内では2人続けて産休に入ったそうで、雑用でもいいから人手が欲しかったと、みなさん口を揃えて言っていた。

悪く言えば、特に期待はされてはいない。産休メンバーが戻るまでつなげば何とかなりそうだった。

「須賀ちゃんは若いから!24だなんてぴちぴちじゃないの!体動かしてがんばってねぇ!電話もハキハキ回してね!」

とは、三児の母である有馬さん談。けっして嫌味のない、朗らかでいてぴりりと厳しいお母さんという感じだった。

よし。雑用でも、働かせてもらえるのは有難い。
体動かすのは好きだし、元気もあるから大丈夫!

「須賀ちゃん、教えるから来てー」
「はいっ!」

気合いを入れて初仕事に臨んだ。






「はあ……」

疲れた。疲れすぎた。
初仕事はやはり気を使った。有馬さんを始め、職場の人たちがいい人なことだけが救いだ。
教員の中には、ちょっとアレな人も……正直いた。

「はああ……」

帰りのバスで二度目の溜息をついた時、くすっと隣の人が笑った。
え?と見上げると、20代後半のスーツの男性が私を見てニヤニヤ笑っている。


「ごめんなさい。新しい事務室の子だよね。すげー漫画みたいな溜息ついてたから」

「…………」

どちらさまだ?
怪訝な顔でいると、「あ、覚えてくれてない」とまた笑っていた。

「俺、紅葉の中等部で数学教えてるんだけど。今日電話回してくれたでしょ。上まで郵便物持ってきてくれてたし」

「…………先生なんですか?」

「そうだよー」


見た目インテリぽいけどチャラいな……。
もっと、無愛想なぐらいのほうがいいや。

私は必要以上に愛想を振りまかずに、礼をしてバスを降りた。
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