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17歳の寄り道
第35章 【千晴編】24歳、須賀千晴
ふ、藤田先生がいた…!
翠学園辞めて紅葉にいたんだ…!

涼太は知ってたのかな?
あーびっくりした!びっくりしたぁ…!

途端に胸は高鳴り、あの頃の甘酸っぱい想いが、私を過去へ引き戻す。

先生がいる職場だったなんて。
接触はないけど、先生が毎日いるなんて……!


その日から少しずつ仕事が増え、受発注業務の引き継ぎを受けながら、ミスしないように必死だった。
勝手に顔が緩んでしまうのを抑えて退勤する。


正職員の方は残業もあったりするけれど、5時きっかりに帰れるのは、いいところだなぁ…。
前の仕事は残業多かったし。


グラウンドを横切る時、サッカー部が活動しているのが見えた。

少し立ち止まって、フェンスの外側から観察する。

指導してるのはどう見ても藤田先生だ。
なんで気付かなかったんだろう。
いるわけないと思い込んでいたからかな。

あの背の高いキーパー君が涼太で、あの童顔のDF君が三浦君みたい。

顔は違うけれど、6年以上前の二人に重なる……


ガシャン!!

「キャー!!」

フェンスにボールが激しく当たった音にびっくりして、悲鳴を上げてしまった。

「すみません!」と、キーパー君が走ってきて、さわやかにボールを抱える。

「ご、ごめんなさい、私こそ…」

まごついていたら、キーパー君は白い歯をキラリと見せて頭を下げて戻っていった。
そして聞こえる藤田先生の叱咤。

……懐かしい。

私は、もうクラリネットバッグを抱えてはいないし、セーラー服も着ていない。

でも、このフェンスを隔てた向こうは、まるであの頃のようだ。

まだ見続けていると、藤田先生が腕を組みながら視線をくれた。
チャンスとばかりに手を振ったら、先生は酷く怪訝そうにした後、私に背を向ける。


……オトナになったのに、あの頃と変わらず、あしらわれてしまった。


それでも、いい。
別に何も求めるつもりはなく、随分昔に、すでに決着はついている。

今は少しだけ、先生と再会できた喜びに浸っていたい。
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