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17歳の寄り道
第35章 【千晴編】24歳、須賀千晴
私は、窓を開けて消えてゆく二人の後ろ姿を見送りながら、助手席に背中を預けた。

あれから何年も経ったのに、私の心は振り出しに戻ってしまったなぁ。

先生。
私、今日で25歳だよ。
いい年齢だと思うんだけど。
周りには、結婚してる子だっているんだよ。

と思いながらも、心の裏では先生のご家族の姿が浮かぶ。
25になっても、往生際が悪いのは変わらない。

夜空を眺めていると、ふわぁとあくびが出た。
私もそんなにお酒が強い方ではなく、飲んだら眠気に襲われる。

今夜は雨雲が広がっていて星は全く見えず、湿気を含む夜の風が私を撫でた。
噂では台風が来るらしい。

「月も出てないじゃん…」
と呟いた時、階段から藤田先生が降りてきた。

先生が豪快にドアを閉めて座ったので車が揺れる。

「ど、どうしたんですか?怒ってます?」
「別に」

でも、見るからにイライラしてるような…。

「ケンカでもしたんですか?吉川先生と」
「ケンカなんかするか。親子ほど年が離れてるんだぞ」

ってことは、お説教を喰らわせたのかな……?
じゃあ、倉谷先生にもお説教した方が。

「…変な天気だな、今日は」
「台風が来るそうですよ」
「なるほどな。シートベルト付けろ。送るから」

送ってもらって、終わりか…。
いやいや、当たり前だから。
何期待してたの。

……今日、一緒にいられただけで満足しないと、また繰り返してしまうのは目に見えている。
そんな予測ができるようになった分、少しは成長したのかな。

そう考えていると、先生は前を向いたまま質問をしてきた。

「いくつになったんだ」
「え?」
「今日、誕生日じゃなかったのか」

先生は眉間にシワを寄せたままだけど、感激した。

「25になりました」
「早いな。月日が経つのは……」

そんな優しく呟かないで。
私が今でも諦められなくて苦しい事なんて、先生はわかってない。

私が今もどれだけ好きか、先生はちっとも……


「先生は、お酒好きなんですか?」
「……昔より、少し飲む量は増えたかな」

スムーズに流れていた車も赤信号で引っかかり、険しいままの先生を覗き込んだ。


「それなら……今度、飲みに行きませんか?二人で……」


せっかく、ただの元教え子でいようと思ったのに。

何年経っても、先生に近づきたい。

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