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17歳の寄り道
第36章 【千晴編】台風の夜
室内はエアコンがつけられている。
冷房が効いていて窓は開いていないのに、外の激しい風の音が聞こえる。
台風の勢いは、部屋の中にいてもわかった。


「酒が抜けたら車で送る。台風も朝には過ぎるらしいから」

先生がこちらに近づいてきたので、胸元で携帯を握って壁へ寄る。
そんな私の前を通り過ぎ、洗面所へ行こうとする藤田先生。

「ドライヤー使え」

あ、なんだ。
キスとか、されるのかと……。
そんなわけないよね。自意識過剰。

……それより。

「…あ、あの」
「何だ」
「家の人は…?」

先生は黙って立ち止まり、おどおどしながら壁に引っ付いている私をじろりと凝視する。

「知らないのか」
「え?」
「俺が翠学園を辞めた理由だよ」
「……し、知らないです…」

学園を辞めた事とご家族と、関係が…?

「……噂好きな奴らは皆知ってると思うがな」


先生は意地悪く微笑むと、「上を向け」と温度のない声で命令した。

困惑しながら見上げたら、先生の巨躯が私を壁に押し潰す。

そして、唇が触れそうな距離まで顔を近づけて言い放った。

「嫌なら拒め」

「…………」

仕留められる獲物のような気分で、先生を見つめ返す。
恐ろしく官能的な瞳に、早鐘のように鼓動が打ち続けて止まない。

先生の腕をきゅっと掴む。
先生の好きにしてください。という意志を込めて。
先生になら、何をされても後悔することはない。


先生は私が掴んだ腕を静かに一瞥すると、鋭い眼差しを私に注ぎ、唇を激しく塞いできた。

深い情欲を感じさせる懐かしいキス。
さっきの車のキスなんて、お遊びだったと思う。

先生の舌が唇を割り、難なく私の舌を探し当てて、簡単に弄ぶ。

キスの衝撃に耐えられずふらつくと、先生は私の腰を抱き寄せた。
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