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17歳の寄り道
第37章 【藤田編】体育教師、藤田哲
ふたりで見上げた満月と、空を映す鏡のように、水面に浮かんでいた満月は忘れられない。

しがらみのない未来に羽ばたいていくはずの彼女を、淫らな鎖で繋ぎとめてはいけない。

これでよかったんだ。
これで、また元の何もなかった毎日に戻るだけだ。

彼女を手離した時、寂しさもあったが、自分が真っ当な人間に戻れた喜びと、彼女の未来を壊さずに済んだという安堵の思いもあった。


そして彼女が卒業した年の夏。
母親が他界した。

母親の葬儀で、みのりと決定的な亀裂が生じた。

元々、構築できていない夫婦関係だったこともあり、最後まで歩み寄る事はできず、修復は果たせなかった。

惇の大学卒業を機に離婚が決まり、翠学園の退職も余儀なくされ――学園にずっと尽くしてきたつもりでいたのに、この手には何も残らなかった。



――――あれから数年後。

彼女はますますきれいになって、何もかも失った俺の前に再び現れた。


そして今、生まれたままの姿で俺を見つめ、ソファの上に横たわっている。



ソファを軋ませて彼女に馬乗りになると、彼女の腕が俺の首に絡み、優しく引き寄せた。

「先生、キスして……」

40代後半の俺は、彼女と同年代の男ほど性欲はなく、彼女を満足させる事は難しいかもしれない。

それに、彼女が元生徒だという背徳感は抜けず、一線を越えないように自分を戒めていたあの時の気持ちは、昨日のことのように思い出せる。

抱いてしまうことへの罪悪感は、ないと言えば嘘になる。

彼女はもう、子供ではない。
しかし――。

理性と本能が絶え間なく鬩ぎ合う。


彼女の細い腕に造作なく引き寄せられ、横たわるそっと彼女に口付けると、柔らかな唇が開き、誘い込むように舌がかすめた。

隙間に舌を捻じ込むと、甘い吐息と共に、彼女はうっとりと瞳を潤ませて、涼しげな目元がほんのり色づいたように俺を見つめる。


その表情を見ながら、深く求めてくる彼女と舐め合うように舌を絡ませていると、彼女は俺の手をぎゅっと握り胸に当てた。



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