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17歳の寄り道
第38章 【千晴編】スタートライン
……来年の春がきたら、一緒にいよう。

それが、台風の日に先生が耳元で囁いた言葉。

私はプロポーズと受け取り、先生も否定はしなかった。
でも、それ以来。
セックスはあっても将来の話はない。

それでもよかったのに、やっぱり本物の新婚さん(夫は不在だったけど)を見てしまうと、先生と私は……違う。

恋人と呼ぶにも躊躇するほどよそよそしい。
元々の先生の性格を思えば、かなり優しくしてくれているのは、わかっているんだけど。

それに……
先生は、他の人と、新婚時代を一度過ごしている。


ああ、ダメ。
マイナス思考にも程がある。

バスタブに溜まるお湯を見つめながら、顔を振った。
しょっぱなからこんなことでは、ゴールまで辿り着けやしない。
いろいろあるってわかってたのに、先生に抱かれているうちに、くだらない嫉妬心が芽生えてきた。


すると、暗かったバスルームの照明がぱちりとつけられた。

「何してるんだ…こんな暗い中」

先生は呆れながらバスルームに入ってきた。

「ちょ、ちょっと考えごとを」
「……うちに毎日来るのも大変だろう。ペースを落としても構わないぞ」

先生は、毎日来るのは迷惑?
私は、ずっと一緒にいたいよ。

「先生が大変なら、来ないようにしますけど…」
「……そういうことを言ってるんじゃないだろう。どうしたんだ今日は」
「……別に、何も…」

ふいと目を逸らしたら、先生は私の顎に指を掛けた。

「よくしゃべるくせに、肝心なことは言わないんだな」

私を見下ろすようにし、先生はさらに顔を近づけた。

「お前が何か言いたげにしていることぐらい、わかってる」


答えるより先に、キスで塞がれた。
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