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17歳の寄り道
第38章 【千晴編】スタートライン
「あ!お嬢さん!どうしたの?今帰り?」
女将さんはいつものしっとりとした和装ではなく、普通のカジュアルな格好をしていて、髪もラフに纏めている。
今日は定休日だった。
「はい……帰ります」
私の目が赤いことに気付いたのか、女将さんは両手を揉むようにし、小料理屋のシャッターを開ける。
「少し一服して行く?私は今から晩御飯なの。今日は誰もいないわよ」
とお惣菜の袋を持ちあげて微笑んだ。
ここから家までのバスの本数が少なく、1時間に1、2本。
駅まで出るとたくさんあるけれど、そこまで乗る気力もないし…。
何より、まだ涙が出そう。
「お邪魔していいですか?」と女将さんに言うと、「もちろんよ」とお店に招き入れてくれた。
カウンターに着くと、女将さんが冷茶を出してくれた。
あの台風の日以降、先生に連れられて、私も何度かここを訪れている。
「お酒でもいいんだけど、哲先生に怒られちゃうからね」
女将さんは、先生を「哲先生」と呼んでいる。
私の知らない先生のことを、たくさん知っている気がした。
先生と女将さんがどういう関係かは聞かされていないし、女将さんも私と先生の関係は知らないはずだ。
「せっかくの休日に、息子夫婦の店の手伝いよ~。お惣菜作り飽きたわぁ」
と、自分の肩を揉みながら私の隣に腰掛ける女将さん。
隣の総菜屋は、女将さんのお子さんのお店だったのか。
「最初は反対したけど、うちの店の分も作ってくれるらしいから、まぁいいかー、ってね。せっかくやりたいことが見つかったんだし、頭金も出してやって。甘やかしてるね…。バカだけど、一応一人息子だから、ついね」
「そんなことは…」
女将さんは私の隣に座り、惣菜のパックを広げ、お箸をくれた。
女将さんはいつものしっとりとした和装ではなく、普通のカジュアルな格好をしていて、髪もラフに纏めている。
今日は定休日だった。
「はい……帰ります」
私の目が赤いことに気付いたのか、女将さんは両手を揉むようにし、小料理屋のシャッターを開ける。
「少し一服して行く?私は今から晩御飯なの。今日は誰もいないわよ」
とお惣菜の袋を持ちあげて微笑んだ。
ここから家までのバスの本数が少なく、1時間に1、2本。
駅まで出るとたくさんあるけれど、そこまで乗る気力もないし…。
何より、まだ涙が出そう。
「お邪魔していいですか?」と女将さんに言うと、「もちろんよ」とお店に招き入れてくれた。
カウンターに着くと、女将さんが冷茶を出してくれた。
あの台風の日以降、先生に連れられて、私も何度かここを訪れている。
「お酒でもいいんだけど、哲先生に怒られちゃうからね」
女将さんは、先生を「哲先生」と呼んでいる。
私の知らない先生のことを、たくさん知っている気がした。
先生と女将さんがどういう関係かは聞かされていないし、女将さんも私と先生の関係は知らないはずだ。
「せっかくの休日に、息子夫婦の店の手伝いよ~。お惣菜作り飽きたわぁ」
と、自分の肩を揉みながら私の隣に腰掛ける女将さん。
隣の総菜屋は、女将さんのお子さんのお店だったのか。
「最初は反対したけど、うちの店の分も作ってくれるらしいから、まぁいいかー、ってね。せっかくやりたいことが見つかったんだし、頭金も出してやって。甘やかしてるね…。バカだけど、一応一人息子だから、ついね」
「そんなことは…」
女将さんは私の隣に座り、惣菜のパックを広げ、お箸をくれた。