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17歳の寄り道
第38章 【千晴編】スタートライン
「私も今日お惣菜買いました。美味しかったです」
「そうなの!嬉しい。じゃあ、もう食べ飽きてる?」
「いえ、いただきます」
茄子の煮浸しをぱくりと食べると、優しい味がして、女将さんの出す料理に少し似ていた。
「おいしいです。優しい味で……」
「ありがとう。それ、息子の味付けなの」
女将さんはそれは嬉しそうに微笑んだ。
「それにしても、哲先生もすみに置けないね。ああ見えて、突然こんな可愛い子連れて来るんだもん。びっくりしたわよ」
「え……」
箸を置き、女将さんに視線を遣ると、ふふふと笑っている。
「つきあってるんでしょう。わかるよ、見ていたら」
いつもと違う装いで、女将さんは微笑む。
こうして見ていると、うちのママよりは年下なのかもしれない。
「離婚する前も、した後もずーっと女っ気なかったから、ずっと一人でいるのかなと思ってたけど、あなたの事好きでしょうがないのね」
こんな風に先生の話を聞かされるとは思わず、口ごもった。
「……だから、捨てないでやってね。振られたら哲先生立ち直れないわよ」
「それは……逆です。先生は、私が去っても追いかけてこない……」
私の反論に、女将さんは深みのある眼差しを向けて笑う。
「この年になるとね、いろんなもの背負ってるから、何もかもかなぐり捨てて追いかけられないのよ。ましてやあの性格なんだから。追いかけられなくても、ずっと待ってるよ。あなたを」
………。
涙が膝に落ち、女将さんは新しいおしぼりをくれた。
「す、すみません……」
「いいのよ。泣いても。誰も咎めやしないわ」
女将さんは、私の背中を擦り、笑った。
カウンターの向こうの棚の上にいつも飾ってあるトロフィーを眺める。
あれも息子さんのものなのかな…。
涙が止み、おしぼりを握りしめていたら、女将さんはお箸を置いて冷茶を注いでくれた。
「そうなの!嬉しい。じゃあ、もう食べ飽きてる?」
「いえ、いただきます」
茄子の煮浸しをぱくりと食べると、優しい味がして、女将さんの出す料理に少し似ていた。
「おいしいです。優しい味で……」
「ありがとう。それ、息子の味付けなの」
女将さんはそれは嬉しそうに微笑んだ。
「それにしても、哲先生もすみに置けないね。ああ見えて、突然こんな可愛い子連れて来るんだもん。びっくりしたわよ」
「え……」
箸を置き、女将さんに視線を遣ると、ふふふと笑っている。
「つきあってるんでしょう。わかるよ、見ていたら」
いつもと違う装いで、女将さんは微笑む。
こうして見ていると、うちのママよりは年下なのかもしれない。
「離婚する前も、した後もずーっと女っ気なかったから、ずっと一人でいるのかなと思ってたけど、あなたの事好きでしょうがないのね」
こんな風に先生の話を聞かされるとは思わず、口ごもった。
「……だから、捨てないでやってね。振られたら哲先生立ち直れないわよ」
「それは……逆です。先生は、私が去っても追いかけてこない……」
私の反論に、女将さんは深みのある眼差しを向けて笑う。
「この年になるとね、いろんなもの背負ってるから、何もかもかなぐり捨てて追いかけられないのよ。ましてやあの性格なんだから。追いかけられなくても、ずっと待ってるよ。あなたを」
………。
涙が膝に落ち、女将さんは新しいおしぼりをくれた。
「す、すみません……」
「いいのよ。泣いても。誰も咎めやしないわ」
女将さんは、私の背中を擦り、笑った。
カウンターの向こうの棚の上にいつも飾ってあるトロフィーを眺める。
あれも息子さんのものなのかな…。
涙が止み、おしぼりを握りしめていたら、女将さんはお箸を置いて冷茶を注いでくれた。