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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
金曜日。仕事が終わり、切れたクレンジングとソープを買いにデパートまで来た。

美白エッセンスもほしかったし。
明後日の決戦に向けて、気合入れたいし!


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

カウンターに近づくと、モデルのようなBAさんが近づいてきた。
ピンクの唇がすごくかわいくて、薄茶色の瞳には引き込まれそう。
妖精と見間違いそうなぐらい美しい。

白いハイチェアに腰掛けて接客が始まる。
美白モノの相談も終わり、お会計直前でお姉さんの唇が目に留まった。

「…お姉さんのリップかわいいですね~。どの色使ってるんですか?」

聞いてみると、お姉さんの表情が明るくなった。

「ありがとうございます!新色じゃないんですけれど、ずっと気に入って使っていて。あまり肌色を選ばないお色なので……」

お姉さんが出してくれたのは、肌になじむこっくりとした濃い目のピンクルージュ。

「わー、かわいい。」
「お時間よろしければ、おつけしましょうか?」
「ぜひ!」

さらりとケープを掛けられ、魔法のようにメイクを施される。

すごいなー。人を美しくする仕事って。
BAに限らず、誇りを持って仕事をしている人は輝いて見える。
私には、何もないから。


「とてもお似合いですよ」と、ケープが除かれた。

鏡に映った自分を確認すると、唇そのものが発色しているように肌色にぴたりと合っていた。

「かわいい!自分で言っちゃうけど!」
「いえいえ、かわいいですよ!」
「じゃあこれも下さい!一括で!」

会計が済んで、「ありがとう」と紙袋を受け取った。
お姉さんのお陰で、ハッピーな気分でデパートを後にした。


このまま家に帰るのはもったいない。
先生のマンションに寄ってもいいかな?

合鍵もあるし……。

両親の許しが出るまでは、お泊りは控えようと思っていた。
日曜日に先生がうちに来て、もし親に許してもらえば、来週から先生の家に転がり込むつもりでいた。

「やっぱり、顔見て帰ろう。」

私は、実家方面のバス停を通り過ぎ、先生のマンション方面のバス停に並んだ。
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