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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
「両親、許してくれるかなぁ…」
「さあな。一回では無理かもしれないな」

先生がばさりと切り捨てる。

「そんな~……」
「仕方ないよ。客観的に見てみろ。親なら、もっと他にいなかったのか、って思うと思うよ」
「親がそう思ったって……私は哲さんがいいのに……」

やっぱり、先生の運転では車酔いしない。

「哲さんの運転なら酔いませんよ」
「そうか。じゃあ早く許しをもらって、俺の家から一緒に車通勤することだな」

許しを得たら一緒に住んで、入籍は来年の春にしたいな、と話した。
私と一緒にいるのが当たり前の様な口振りに、嬉しさが込み上げる。


先生がいつも降ろしてくれる場所に着いた。

「よく寝るんだぞ」
「寝てるんだけどなぁ。もっと寝ます」
「ああ。じゃあ、日曜」

目を合わせて、またなと言ってくれる。
昔はそれすら、あり得なかったことだ。

先生の車が消えるまで見送り、空を見上げたけど月はいない。
代わりに、夏の夜空に瞬く星がとてもきれいだ。今日は新月かな?

先生の指輪、嬉しいな。
シンプルなリングがいいな。
ずっとつけていたいから。

明後日の決戦は緊張するけど、先生がくれた幸せで顔が緩む。
砂利道を歩き、家に帰った。



――日曜日。

母が先生にお茶を出し、席に着いた。
父は黙って座っている。

その向かいに、私と、スーツを着た先生。
背も高いし体格がいいから、なんだか格闘家のような箔があり、強そうだ……。

しかし母は物怖じせずに切り出した。

「入籍はまだ、反対です。理由は……先生も、お分かりかと思いますが。」

母の率直な意見が次々と並び、ハラハラした。

「……申し訳ないのですが、先生が信用できる方かどうかというのが、私たちにはまだわかりません。しかし、千晴の心は千晴のものですから、それは娘に任せようと思っています」

先生は、お茶には手をつけずに母の話を聞いている。
……付き合いは自由にしていいけど、結婚は反対ということか。

やっぱり、祝福はされないのか……。
こんなに好きでも、それとこれとは別なんだ。
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