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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
すると、父が話し始めた。

「……僕は、千晴が幸せなら、どういう形でもいいと思っています。先生にも、いろいろ事情があったのだろうと思いますから……。千晴のことを幸せにするという気概が先生におありなら、野暮な口は挟みたくないとも思っています。ひとつ、よろしくお願いします」

母の意見を覆すような父の内容に、グッと来て、目頭を熱くする。

「私も……千晴さんの幸せを一番に考えるつもりです。宜しくお願いします」

先生が頭を下げた時に、耐えられず涙。

母は不服そうに父と先生を見、めそめそ泣く私に溜息をついていたが、明確な答えは出されずに第一弾の決戦は終わった。


手離しでは喜べはしないけど、一応、公認……?

私は先生が乗ってきた車に乗り、スーツを着た先生とドライブが始まった。

「はあ…………」

先生の溜息。
呆れた溜息なら聞いたことあるけど、これだけ脱力感のある溜息は初めてだ。

「緊張した……」
「でも、なんか感動しました」
「ああ。……ご両親のお気持ちを思うと、自分の不甲斐なさがよくわかったよ。バカだなぁ、俺は……」

信号が赤になり、緩やかにブレーキがかかる。
ギアの上に置かれた逞しい手をきゅっと握った。

「今日は、来てくれてありがとうございました」

先生が無言で私の手を握り返す。

「駅まで行こうか。デパートまで」

あ。指輪?

「行きます!」

両親の心配を疎ましいなんて思わない。
……と言いたいけれど、本音を言うと、少し「もうー!」とも思ったけれど、数え切れないほどの感謝だってある。

先生も、そんな両親の気持ちを汲み取ってくれていて、その上でまだ私と一緒にいようと思っていることに……

「っ……」

への字口で涙を堪える私の横顔を見た先生が、またぎょっとしていた。

「せっかく化粧してるのに、取れるぞ」
「はい……そうですね」
「……よく似合ってるよ。きれいだよ」

先生は、まっすぐ前を見ながらアクセルを踏む。

……この前の、先生の家での会話。
覚えててくれたの?
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