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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
「あー!千晴ちゃん、久しぶりー!」

倉谷先生と通勤中のバスでばったり。
夏休みは出勤時間が合わなくて、久しぶりの遭遇だった。

「なんかさらに可愛くなった?男できたんじゃね?」

鋭い。

「……倉谷先生は彼女できました?」
「えっ、マジで男できたの?」
「声大きいですよ。私は別に何も変わりませんから」
「マジかー。相手吉川だったら殺してやろう」

……発言が中2の数学教師。
相手が藤田先生だと知ったらどうなるんだろう。
返討ちに遭うだろうな…と想像して笑ってしまった。
まあ、少なくとも、私の契約期間が終わるまでは、交際は秘密だけど。

倉谷先生は一人でくすくす笑う私をきょとんとした顔で見た後、ぽそりと呟いた。

「なんか、幸せそう。マジか―。はー。失恋した」
「それはどうも」
「邪魔してやろっかな」

バスが紅葉学院前に着き、倉谷先生と笑いながらバスを降りる。

登校中の生徒たちは、私にも礼儀正しく挨拶してくれて、爽やかな思いが心を駆け巡る。
私も大人になったつもりでいたけど、親にとってはまだまだ子供なのかもしれないなと、彼らの姿を見ると思う。



お昼。
有馬さんと定食屋で、ずるずるとつきみうどんをすする。
うどんだけじゃ足りない気がして、かやくご飯に、もずくに、酢の物も頼んだ。あとからあげも。

「おいしいです…」

至福の表情で貪っている私を見て、有馬さんが目をぱちくりさせていた。

「須賀ちゃんよく食べるねえ?食欲の秋?まぁ、元々細いから食べたほうがいいよ!」

仕事もかなり慣れてきた。
育休取得中メンバーのうちお一人が、今保育園探しに躍起になっているという話を聞きながら、どんどん食べる。

「産んで育てて働くって、母って、大変ですね……」
「まあね~。大変よぉ。風邪のシーズンなんて、地獄よぉ」
「想像するだけで壮絶です…」

ふふ、と笑う有馬さん。

「泣きたいこともたくさんあるけど、幸せもたくさんあるのよぉ。じゃないとやってられないわ。育児なんて」
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