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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
先生は、「……土日のどちらか、ご両親に話をさせてくれ」と言った。

「それまでに私から親に言ってもいいですか?」
「ああ、それは千晴の自由にすればいい」
「…………」

先生にも、心の準備と、惇君に話すための時間か必要だったということまで、その時は考えが及ばなかった。
先生の表情を見ていたら、これからどうすればいいのだろうと、目の前が暗くなってしまった。

「千晴。病院はついて行くから」
帰り支度をしながら、先生が言う。

病院か…。
シャツのボタンを留めている手を止めて、顔だけ先生の方に向ける。

「哲さん」
「ん?」
「私、産んでいいんですよね?」


その時、先生は悲しそうな顔をした。

「当たり前だろう。俺が、それ以外の答えを言うと思ったのか……?」

…………だって、わかんない。
この話が始まってから、ずっと先生に笑顔はないし。
私もひどく疲れてしまって、答える気力をなくしてしまった。

車に乗り込み、慣れた道を走る。
毎日毎日送ってもらうために、先生は全くお酒を飲まなくなったし、小料理屋にも行かなくなった。

実感のないお腹を撫でてみる。
本当にここに、命があるの?

運転している先生がちらりとこっちを見たから、撫でるのをやめて外を見た。

明日は、お兄ちゃんが帰ってくる日。
今日は、兄と彩ちゃんは、彩ちゃんのご実家に寄っているそうだ。

いいな。
順風満帆だろうな。
初婚同士だし。

順番を間違えた私と違って。
自分のことしか考えていない私と違って。
みんなに祝福されてるんだろうな。
日頃思い浮かびもしない、ひねくれた考えが浮かび、吐き気がした。

こんなママでごめんね、と、心の中でお腹につぶやくけれど、何も返事はなかった。
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