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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
「……千晴、ちょっと出よう。これじゃお腹に悪いわ」

緊迫した空気の中、母が私の腕を引っ張った。

「え、でも、こんな状態でほっておけないじゃん…!」

花瓶は割れて水浸しだし、ガラス飛び散ってるし、しかもこれ以上殴り合いになったら……。
私がまごついていると、「いいよ。出てて」と先生も私に言う。
母は先生に軽く会釈をしてから私を外へ連れ出した。


……びっくりした。

あの温厚な父が、あれだけ怒るなんて。
庭の砂利道を歩く膝が、小刻みに震えている。

「千晴。助手席乗りなさい。足元気をつけて」
冷静な母はガレージに周り、私を呼んで車に乗せた。

着いたのは、車で5分ほどの場所にあるレストランカフェ。
母はアールグレイ、私はカフェオレを頼もうとしたら、取り消されて、ハーブティーを頼まれた。

「カフェインは控えなさい」

……そうなんだ。コーヒーはだめなんだな。
友達も結婚していない子が多いし、周りに妊婦さんがいないのもあって、そんなことすら知らなかった。

つわりがないせいか、妊娠している実感はなくて、疲れやすいのは夏バテだと思っていたし、全てにおいての認識が甘かった自分がほとほと嫌になった。

「ごめんなさい……」

それしか言葉が出てこない。
母は、目を伏せてアールグレイのカップに口をつけた。

「……もういいわ。謝られても、この状況は何も変わらないんだから。あれだけパパが怒ってるの見たら、怒る気失せたわよ。ママだって、千晴が本当に幸せなら文句はないの。ただ、パパの逆鱗に触れちゃったのは仕方ないわね」

「……私のせいなのに、哲さんだけ悪く言われるのは……」

そう言うと、母は呆れた顔をした。

「何言ってるの。赤ちゃんには罪はないから連れ出しただけで、本当はあなたも哲さんと同じ立場よ」
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