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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
月は替わり、10月になった。

「須賀ちゃんは、『藤田ちゃん』なのねぇ…」

お昼、例の定食屋で有馬さんが、親子丼を食べながらうっとりと言う。
教職員の人事関係は有馬さんが握っているので、私と先生が入籍したことはすぐに周囲の知るところになった。

先月入籍をして。
病院にも行って、母子手帳ももらった。
出産予定日は4月半ば。

先生のマンションに引っ越しをして、派遣コーディネーターさんにもすぐに事情を説明した。
派遣先の育休中メンバーが早期復帰する予定になっていたので、私は2月いっぱいまで勤めることで丸く収まった。

「藤田先生ってかっこいいわよね~。ちょっとうちの旦那に似てるのよ~!旦那はもっとおしゃべりだけどね!」

…おしゃべりな藤田先生って想像がつかない。

「有馬さんは、その……私と先生のこと、最初から気付かれていたのですか?」
「ん?うん。紹介した時も、藤田先生のあんな顔見たことなかったから、ははーんって。須賀ちゃんも吉川先生なんて全然眼中なかったし」
「すごいですね……有馬さん」

それだけバレるような、露骨な感じなんのだろうか…と心配していると、有馬さんは、大丈夫よと笑っていた。

「私、昔からそういうの鋭いって言われるのよ~。社内恋愛どれだけ見抜いてきたか。社内不倫もね!一人でこっそりニヤつかせてもらってるわ」
「恐ろしいですね……有馬さん」
「ふふふ。でも、おめでとう。赤ちゃん楽しみね!」
「はい。無事に生まれてくれたらなと思います」

うんうん、と有馬さんが頷き、人のいる店の入り口に目を移す。


「あー!ここ空いてますよー!」

そう声をかけると、吉川先生だけが入ってきた。

結婚して変わったことは、藤田先生は外でお昼を取らなくなったこと。
私と一緒にいるのは、先生としてはNGのようで、教官室で食べているらしい。

「休憩中なんだし、いいのにね、ちょっとぐらい」と有馬さん。

それを聞いて、「来ないのが藤田先生らしいんじゃないですか」と吉川先生が笑っていた。
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