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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
「何の面白みもない親父なのに。受け入れてくれてる女がいるんだって驚いたけど、まさかそれがちーちゃんだとは。どこで繋がってるかわかんないね」

惇君の考えに触れて、心のどこかで持っていた罪悪感のようなものが少しだけ薄らぐ。

「赤ちゃんの名前は考えてるの?」
「ううん、全然」
「じゃー俺が決めよ。……サトシとチハルを合わせてサトルでいいんじゃない」
「………かわいいけど、安易すぎない?」

肯定も否定もしないでいると、惇君は何かを思い出したように苦々しい顔をする。

「サトルもサッカーさせられんだろな~。俺みたいに無理矢理……。全っ然向いてなくて泣いて辞めたけど」

苦笑…。
想像できすぎる。

惇君の子供時代の話は、聞いていて微笑ましい。
愛情がなかったとは思わない。
愛情を与えられていないとこうは育たないだろうと思う。

しばらく話していたら、玄関のドアが開く音がした。

「あ、親父帰ってきた。じゃあ俺帰ろ。ちーちゃんに会いにきただけだし」

惇君がとても優しい人だって、先生はもちろんのこと、私もわかっている。
私のことも先生のことも気に掛けて、様子を見に来てくれていることも。

先生がバッグを置くと、惇君は掛けていたコートを取り、羽織り始めた。

「もう少しゆっくりして行かないのか」
「これからデートだし、また来るよ」

東京で暮らしている惇君用に、ひとつ部屋を空けてあるけど、いつも泊まって行くことはない。

「部屋勿体ないよー。俺のためにおいとくなら、サトルに使ってよ」
「サトル?」
「この子です……今名付けられました」と、私はお腹を指差した。


惇君が帰った後。
先生は、私と同じデカフェのコーヒーを飲みながら、先日撮ったエコー写真を眺めていた。

「男か……」

ぼそりと呟いたのを聞き逃さない。

「え。哲さんまで『女の子が良かった』なんて言わないで下さいね」
「誰だ?そんなこと言った奴は」

ふふっと笑うと、先生は、「全く…」と頭を掻いていた。
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