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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
「千晴ちゃん!だいぶふっくらしたねぇ、お腹」

仕事帰りに寄ったお惣菜屋さんのレジには、腰をさすっている女将さんがいた。

「女将さん!腰大丈夫ですか?」
「うん……大丈夫ではないね〜。お店も随分休んじゃって、この先どうするか考えてるんだよ。こうして、短い時間のお手伝いなら大丈夫なんだけど……」

女将さんが腰を痛めてしまい、最近は小料理屋を閉じている。
女手ひとつで回してきた店だが、潔く辞めて、惣菜屋一本でやっていく道も考えているらしい。しかし閉店を惜しむ声は多い。

「息子のお嫁さんも、いつおめでたになるかわからないしね。息子が小料理屋継ぐ道もあるけど、お嫁さんに負担掛けたくないしねぇ…。哲先生は元気?」

レジを打ってもらいながら話をする。

「元気ですよ。というか、いつもと変わりません」
「そう。それなら安心だね」

話していると、店の奥からお嫁さんが出てきた。休憩中だったようだ。

「お義母さん、ありがとうございました。替わります」

お嫁さんは、華美な雰囲気のない、慎ましく芯の強そうな雰囲気。
息子さんとは調理師の専門学校時代に知り合って、長くつきあった末結婚したそうだ。

「お嫁さんは小さい頃から苦労してる子だから、すごくしっかりしてるんだよ。あのバカ息子とも飽きずに一緒にいてくれるんだから、感謝しないとね」と女将さんは話していた。


手抜きで申し訳ないけれど、その息子さんとお嫁さんが作ったおいしいお惣菜で晩御飯。
先生が帰ってきて、二人で食卓を囲んだ。

女将さんの話をすると、先生は
「変わらないものなんてないのかもしれないな」
と呟いた。

それは、先生自身にも言っているような気がして。
私は、じっと先生を見つめた。

「……何だ?」
「私はずっと、好きですよ。哲さんのこと。変わらないですよ」

先生は、俯きながらノンアルビールを飲み、少しだけ口角を上げる。

想いは変わらないよ。
きっと。
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