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17歳の寄り道
第40章 【村上編】心月
家に着き、さっきの白い封筒を開けた。
中には、三つ折りの便箋と写真が2枚入っていた。

写真は、ジャージを着た白川が子供たちの端で笑っている姿と。
雑然としたデスクの前で振り向く、白衣を着た浅野の姿がそれぞれ一枚ずつ。

二人の眩しいほどの笑顔に胸を熱くしながら、便箋を広げた。


――この手紙が、先生の元へ届くことを願いながら書きます。

村上先生、お元気ですか?
去年、浅野君(今は広瀬ですが…)と入籍しました。
忙しいので式は挙げていません。

私は、○○短大を卒業後、いまは幼稚園教諭として働いています。
私も今、たくさんの子供たちに「先生」と呼ばれるようになりました。

高校の先生とはちょっと違いますが、子供たちが歩む人生の通過点にいる大人として、彼らが成長していく手助けができればと思いながら、日々過ごしています。

あの頃の、村上先生のように。


先生は今、研究所でたくさんお仕事されているのでしょうね。
お体だけはお気をつけて、いつまでもお元気でいらしてください。

いつかまた、お会いできますように。
私も遥も、そう願っています。

広瀬 碧


――追伸
遥は今、小児科医目指して頑張っています!



「小児科医……」

便箋を折り戻し、再び写真を見た。

「あいつ、結局医者目指したのか……」

今はまだまだ修行中の身だろうが、その姿、似合っているじゃないか。

白川に至っては、しっかりと地に足をつけている様子で、教育者としての貫禄も出てきている。
あんなにふらふらして、俺の目を覗き込むようにしていた不安な面持ちなどもう感じさせない、強い意思がその瞳から見てとれる。

目頭に熱いものが込み上げ、しばらくの間目元を指で押さえた。


記憶は風化する。
ただ空回りしていただけかもしれない、と思うようになっていたのに、あの頃の熱意と心配は、無駄ではなかった。
この手紙を見る限り、彼らの心の中に残っている。


封筒の裏には、住所が書いてあり、今はこのあたりには住んでいないことがわかった。

便箋と写真を丁寧に封筒に戻し、箪笥の一番上の引き出しにしまう。

――いつか、また。

笑顔で会える日まで。
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