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17歳の寄り道
第42章 【東野編】グロウアップ
「て……」

手伝いましょうか、じゃねえな。
また叱られるわ。

俺が無言で、浅野チーフが用意した資料を長机に置いて回ると、チーフは顔を上げて驚いた。

「あ、ありがとうございます……東野さん」

まさかそんな素直にお礼を言われると思わず、驚いた。

「お昼返上ですか?」
「はい、外出る時間なくて…」

基本的に、みんな昼は外食をする。
時間のない時は、移動販売のお弁当が売っていたりするのでそれを利用したり、ベーカリーカフェで買ってきたりもする。

「一緒に食いますか?今から買ってきますよ」

「いえ……そんなパシリさせるみたいなことできませんし」

パシリ…
つい吹き出したら、チーフはきょとんとしている。

「何か力になりたくてやることなんだから、パシリとは違いますよ。素直に受け止めてください」

「……じゃあ……お願いします……」

いつになく素直なチーフに、少し戸惑いながら配布を終えて、買い出しに行った。

パンと弁当、カフェオレとお茶を買って戻ると、チーフを空いている休憩ルームに呼んだ。

「パンと弁当どっちがいいですか?」
「お弁当で」

あ、即答。
「食後にこれも」とカフェオレを出したら、チーフの顔が少し綻んだ。

「ありがとうございます、お代は」
と財布を出そうとしたので、ついカッコつけて「今日はいいです」と言ってしまう。

「だめですよ、そこはきちんとしないと!」

チーフに千円札を押し付けられ、押し問答に発展するのもカッコ悪いので、情けないが札をポケットに入れた。

「じゃあ、午後からの予習頑張ってください」
立ち上がり、休憩ルームを出ようとすると、チーフが捨てられた子猫のような瞳を俺に向けている。

「東野さん、ここで食べないんですか?」

え。いいのか?
俺がいたら邪魔なんじゃ。

「ちょっと、私の説明がわかるか聞いてもらいたくて。教育課の先輩にもロープレ指導いただいてるんですけど、自信が持てなくて」

いつも自信満々なチーフなのに。
しおらしい態度に、内心困惑した。
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