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17歳の寄り道
第42章 【東野編】グロウアップ
「東野さんは、まっすぐ、正しい道を歩いて育ってきた感じがする。私とは違う、正しい道」

結愛は憂いを秘めた瞳を俺に向けた。

「……そんなことないよ。正しいってどんなんだよ」

苦笑気味に答えると、結愛は真面目な面持ちで呟いた。

「だって、優しいもの。ちゃんとしてるし、裏がなくてすごく普通。私の周りは、クセのある人が多かったから、違う世界の人だなと思ってた」

普通……っていい意味なのか?
それを言うなら、結愛の方が俺には手の届かない場所にいるように思うけど。
細い肩を引き寄せて、ただ抱きしめる。

「……すごくホッとする。こんな安心感……何年ぶりだろう」

いつも凛と佇んでいたチーフが、俺に体重を預けて目を閉じている。

「あ。メイクは落とさなくていいの?」
仕事柄、ついそう言うと、結愛ははっと起き上がり、「落とす!」とバスルームに向かった。

せっかく心を許してくれてたのに、言いたくないであろう話までしてくれたのに、無邪気にひっついてくれていたのに、ぶち壊してしまった……!


……でも、まあ、いいか。

昔のように、相手を見ようとしないで、自分の理想ばかり掲げるような真似はもうしないし、する意味も価値もないことはわかってる。


湯上がりの彼女は、とても可愛らしかった。
すっぴんでも驚きの可愛さだか、少しあどけない。

「あんまり見ないで。東野さんもシャワー浴びる……?」

そうしたいのはやまやまだが、着替えがない。

「どうしようかな。今日は帰ったほうがいいかな、着替えがないし」
「え……やだ」

意地悪のつもりで言ったわけではないが、結愛があまりに寂しそうにするので、光の速さで「じゃあ泊まる」と覆す俺。

俺といるのは嫌じゃないんだな。むしろ……一緒にいたいと思ってくれているようだ。

「……ねえ。名前で呼んでよ」
「涼…太くん?なんて呼べばいい?」
「涼太くんでもいいし、結愛の好きに……」
「涼ちんとか?」
「…………」

涼ちんは嫌だ――。
遥の顔しか浮かばねえ。

俺の顔に、がっつり嫌だと出ていたらしい。結愛は途端に笑い出した。
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