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17歳の寄り道
第4章 【碧編】彷徨うココロ
「大丈夫?やっぱり具合悪いんじゃない」
「う…うう…」
「苦しいのか?これ、過呼吸だな」

先生は、私の背中をゆっくりと擦る。まだ軽くパニック状態の私を、片手で抱き寄せるようにして。

「落ち着いて。白川。ゆっくり息するんだよ。少しすれば、元に戻るから」

浅野君もそう言っていた…

苦しさのさなか、村上先生の胸の中でゆっくりと息を吐いていると、少しずつ手の感覚が戻ってきて、頻脈も治まってきた。
流れていた涙は乾いてきて、村上先生のスーツに頬を当てて縋りつく。

「村上先生、お母さんと、弟が帰ってくるまで一緒にいて……」
「白川…」

私を抱き寄せている方の先生の手が、ぎゅっと力が籠ったかと思えばするりと離れ、私を解き放つ。

「分かりました。少しここから離れよう」
村上先生はナビを切り、河川敷まで車を走らせた。

河川敷に着いたら、先生は傍で見つけた自動販売機でジュースを買ってきてくれた。

「よかったね、落ち着いて。少し焦りましたよ」

先生の、敬語とタメ語が混じる所が可愛らしいと思う。
偏屈というのがぴったりの風貌だが、中身を知るとそういう所も魅力的にうつる。

「なにか、悩んでる?」と先生。

なにかなんて、限定できない。
義父への恐れ、遥の拒絶。
誰でもいいから、私を包んでほしい。

私は、先生の同情をひくために、義父の話を切り出した。

「先生、お義父さんがね、私がお風呂に入ってる時に、パンツ見てたの…脱いだやつ。どう思う…?」

目に涙を溜めながら打ち明けたが、本当は母に言いたいことだった。
先生はつらそうにため息をつく。

「お母さんには言った?」
「言えなかったよ…。お義父さん、『こんなに汚して』って言ってたの。あと、公園でも変な人に襲われかけて、それも言えなくて…」
「いつ?」
「この前…。でも、お母さんには言わないで」

先生は、切なげに私を見つめた。

「誰にも言わない。聞くだけに留めておくけど…でも、どうにかしてほしかったら言って下さい。必ず、何とかするから」

泣きたく何てないのに、涙があふれながら、こく…と頷く。
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