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17歳の寄り道
第4章 【碧編】彷徨うココロ
先生が帰って行くのを見届けてから、夕食の時間。
義父は珍しく打合せがあるらしくて不在だったので、拍子抜けした。

こんなことなら、早く帰ってきてもよかったのだが、帰ってきていたら、今日村上先生が抱きしめてくれることはなかった。


寝る前は河川敷での二人の秘密を思い出し、胸が逸った。
浅野君を思い出すこともなかった。

私の心は、ふわふわ浮いて漂い、村上先生の手の中に。




――翌朝。

「行ってきます!」

自転車がないのを忘れていて、雨の中、走って家を飛び出した。
この分だと遅刻になりそうだし、制服もびしょ濡れだろう。最悪だ~!とダッシュした。

結局、着いたのは1時間目が始まった後。
途中から入るのも迷いがあったので、昨日浅野君に教えてもらった秘密基地で時間を潰すことにした。

誰もいないし、雨もかからない。
昨日浅野君とセックスした場所から少し離れて、段差に横になり、上を見上げた。

目を閉じてみたら、雨の音がサアアアと心地いい…

すると、ジャリ…と靴が地面に擦れる音が聞こえ、目を開けた。

視界には、逆さ向きの小林先輩がいる。
私の頭側に立ち、上から覗き込むように現れた先輩に、びっくりして飛び起きた。

「ひとりで何してんの、碧ちゃん」

小林先輩は、煙草に火を点けて躊躇なく吸い始めた。学校で煙草を吸うなんて、昔の不良の話だと思っていたが…
一応、進学校の扱いではあるこの学校。
このご時世に校内で喫煙する人もいるんだと驚いた。

先輩は、思い切り煙を吸い込み、その煙と同じような色をしている雨雲の空に向かって吐き出し、私を見た。

「結愛に会ったんだよね?」
「…会いました。かわいかったです」
「でしょ。でも遥のお下がりなんだよなあ」

お下がり…嫌な表現だ。
小林先輩は私の横に立ち、上からふーっと煙を吐きかけてくる。

「やめてくださいよっ」
ゴホゴホとむせていると、先輩はコンクリートの上に煙草を落としてぎゅっと踏みつけ、指先で摘まんで雨水がたまっている溝の中に捨てた。

「知ってる?あいつらの関係」
「元カノだとは聞きましたけど…」
「はは。元カノか。いとこだよ。中学の頃からヤリまくってんだよ、あいつら」

考えないようにしていた浅野君のことがリアルに思い出されて、胸が切なくなる。
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