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17歳の寄り道
第1章 【碧編】17歳、白川碧
義父は年頃の私との接し方がわからないらしく、一緒にいて居心地が悪い。
家で仕事をしているので、私が帰ると二人きりでいる時間が長くなってしまうのだ。

弟は保育園に入っていて、実母の会社近くで預かってもらっているので、実母と共に二人で帰ってくる。

何か、特別に義父に酷いことをされたわけでもない。
時折、お風呂上がりに洗面所にいたりするのが気になるが、そのことについては誰にも話していないし、単なる偶然なのだと思う。
私が自意識過剰なのだろう。

実母には義父の話はできない。
表面上はけして問題はない。
何も気にしなければ過ごしていける。

希望した高校にだって行かせてくれた義父には、とても感謝していて、日常の些細なことくらい、自分が我慢すればみんな幸せなのだ。

……だから、帰りは図書室に寄ってみたり、サッカー部を眺めたり、ふらふら自転車を漕ぎながら、できるだけゆっくり時間を潰して帰る。

19時には弟と母が帰ってくるから、その直前に家に着くように。

「帰りたくないなら、部活すればいいんじゃないですか」

村上先生はメガネを上げながら答えた。
帰りたくない理由は聞かないところが彼らしい。

「今更…もう2年生になっちゃったし」

私は頭を下げて自分の上靴を見ながら呟く。
村上先生の大きな溜息が聞こえた。

「そうやって諦めて、ウジウジ後から文句言うの、嫌じゃない?」

「…………」

嫌だよ、こんな自分は。

先生に言われなくても……

自分のことを好きになったことなんてないもの。


大粒の涙が頬を伝い落ちた。
泣くつもりなど全くなかったのに、先生の言葉がひきがねとなって、涙の粒がとめどなく落ちてゆく。

「…うっ……く」
「マジかよ、何で泣くの」
「う〜っ…」

遂にはしゃくりあげるほどになり、村上先生は辺りを見回して、目の前の教室をがらりと開けた。

「誰もいないから、落ち着くまで入って」

私はポケットから出したハンカチで顔を覆いながら、頷いて教室に入った。
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