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17歳の寄り道
第6章 【碧編】タブー
余韻を味わう間も無く村上先生は、飲みかけらしいミネラルウォーターを渡してくれた。
遠慮なく蓋を開けて飲み、唇を舐める。
先生は訝しげに私を一瞥し、乱れた着衣を整えながら、笑い出した。

「気持ちよかった?」
「まあな。下手なりに」

下手か…やっぱり。でも、先生が達してくれるのは嬉しい。

「お母さんとは、話をしてないのか」
「べつに、何も。…心配かけたくないの。私が話をすると、何でも心配しちゃうし。怒るし…」
「母親に心配かけずに、俺には心配かけるのか」

村上先生は、私の頬を親指と中指で横から潰す様に持ちあげた。
頬が強く押し潰されて唇が尖り、ブスな顔になっている。
そして先生が笑う。

Sっぽいな…

ブス顔のまま、メガネの奥の瞳をまっすぐに見つめていたら、先生は指を離した。

「しかし、盛りのついた雌猫みたいだな。困ったもんだな。寂しいんだろうけど…」

愛情不足。
はっきりとした自覚はなかったけど、指摘されるのは初めてだった。
母も、私への愛情はあったと思うが、私がそれを受け取れていなかった、というのが正しいのだろうか。

義父の言動に怯えながらも、母の愛情を手にしている義父への嫉妬もあり、家庭は私の落ち着く場所ではない。

いつも、虚しくて、心にぽっかり穴があいていて。
現状には満足できずに、いつかきっと幸せが待っていると本気で思っていた。


「寂しいのかな、私…」
「…いや、わかんないけど、そう見える」

先生は、黒縁メガネを外してダッシュボードに置く。

「白川が、虚無感やストレスをセックスで満たそうとしているのはわかってるよ。でも、他の男を渡り歩くのは心配で見ていられない。本当に好きな男相手なら何も文句はないけど、そうでもないようだし……俺にまで、こんなことするぐらいだし。」

先生は私を見据え、話を続ける。
メガネをとった先生は、村上先生ではない誰か別の男の人に見えた。
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