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17歳の寄り道
第1章 【碧編】17歳、白川碧
無精ひげが生えていて、冷たい目をして、やる気がなくて生徒には踏み込まない。
毎日、仕事をそつなくこなすだけという印象があった村上先生。

先生は机に肘をつき、長い足を組みかえながら、横目で私を見つめ、白衣の裾がぱさっと音を立てる。

「プラネタリウムにも行くんだ。天体観測もあるよ。ゆるくやってるから来たい時に来るといいよ」
「先生、星好きなの?」
「顧問になってから好きになった」

村上先生の答えを聞いて、ぶぶっと吹き出す。
てっきり昔から好きなんだと思っていたから。

「大人になってからも好きになる事ってあるんだね」

何気なく呟くと、先生は静かにメガネの奥の目線を私に向けた。

「あるよ。今が全てじゃないよ。特にお前たちは、この先の方が長いんだ」

先生の言葉が心に深く深く沁みいり、自分の胸の中で何か特別な感情が生まれるのを感じる。

ときめきだとか、そういう軽々しいものじゃない。
この人は、私に安心をもたらしてくれる…


泣き腫らした目で先生に視線を残すと、先生は少し顔を近づけて、私の瞳の奥を見る。

「泣きやんだな。入部するなら用紙持ってくるけど、どうする?ついでに部室も案内するよ」
「先生も部室にいるんですか?」
「俺はたまに顔出すだけ」

ふぅん…

涙を拭いていたハンカチを握って、ポケットに入れながら答えた。

「入部届だけもらいます。浅野君と一緒なら、嫌だし…」

村上先生は「あいつ、嫌われたもんだな」と苦笑する。

「だって、浅野君、エッチなこと言うんだもん…」

穏やかだった村上先生が難しい顔に変わる。

「エッチなこと?」
「…先生には、言えない」

身を乗り出す村上先生に至近距離で見つめられて、私は顔が熱く、赤くなるのを感じて、両手で頬を押さえた。
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