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真昼の情事
第2章 風呂場

 カラ松の頭に乗っていた一松の手が、縋るように縮こまった。柔らかい袋に包まれた柔らかいものをつるんと口から出すと、ぎゅっと爪が立ってから慌てたように指が伸ばされる。
 ハァハァハァと、全力疾走のあとのような息とともにカラ松の耳に届いた言葉の切れ端は、

「おねが……」

 意味を成す前に消えた。見上げれば、一松は壁に突いた自分の腕に額を押し当てている。自分の切羽詰った欲求よりも、言うことを聞かせてしまうのが嫌なのが先に立つのだ。どうあってもカラ松の自由意志に任せたいのだ。
 焦らして焦らして、腰が立たなくなるまで責めてみたい気持ちもある。一松は、カラ松が心の底から与えたいと思ったものであれば道端の石ころでも大切に保管するだろう男だ。自分のための考えの末になにかが選ばれるというのが価値を持つのだ。どちらを選んでも、自分のために選択されたことなら喜んで受け止めるに違いない。
 ならば。
 ━━フッ。
 可愛いブラザー、愛しのラバーの声を聞き、その望みをかなえてやりたいと思うことになんの妨げがあろうか。

 ━━やってしまった。無意識に声が出てた。すべて決めてもらうつもりだったのに。
 一松は不適に笑んだカラ松が自分の性器を唇に引き寄せるのを、息を詰めて見守った。ぴゅく、と先端から溢れた粘液がカリより先にカラ松の舌に乗ったのを見て自分を褒めたくなるが、これは自分がやったのかカラ松がそう仕向けたのか。ちろりとこちらに向けられた瞳が小さく緩んだ。
 ずるずると深く出し入れして唾液まみれにされ、舌で円を描くようにして亀頭を弄ばれ、出口すぐそこまできたマグマをガツガツと腰を振って出してしまいたくなるが握った手に爪を立ててこらえる。
 カラ松がゆっくりとしたストロークからだんだんとピッチを速めていく。任せようと思うのに、どうしても腰が揺れてしまう。
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