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真昼の情事
第2章 風呂場

 ひとしきり一松を(半ば文字通り)貪って、カラ松は裏筋に吸い付く。そしてそのまま辿って、水滴の滴り落ちる二つの丸みにそっと舌を伸ばした。
 いままで舐めたことがない場所だった。じっと見下ろしていた一松が息を詰めるのが聞こえた。
 敏感な場所だ。様子を見るためにふわりと舌を当てると、それだけで一松の膝が崩れかかる。カラ松は、渇きと少しのいたずら心で、水を垂らす袋を片方口に含んだ。ちゅく、と吸えば、体温よりはだいぶ冷たい水が喉を潤す。生まれて初めて口に含んだ丸いものは、小さくないのに不思議な頼りなさだった。いつか溶けてしまいそうな。
 一松がなにかを言った気がする。聞き取れなかったが。
 怒り半分涙半分、一松がカラ松を、カッコつけなんて嫌いでそもそも必要ないからやめてくれとかき口説いてからどれくらいが経っただろうか。言葉の通り、カラ松がしたいようにすると、簡単に一松は体温を上げてくれた。
 いまもそうだ。言葉は聞こえなくても、頭に添えられた震える手が、断続的に込められる力が、一松の興奮を伝えてくる。

『アホみたいだ』
『あんたバカなの』
 そんな言葉が一松の頭をグルグルと回る。こんなときに玉、舐めるなんて、前からどうしてもしたかったのだと勘違いしそうだ。
 好きにしてもらってこれなんて、どんなご褒美だ。もちろんなにをされても自分が興奮するのはわかってはいたけれど、それでもここまでとは。ブランクも悪くない。
 玉なんて男の体の急所。そこを委ねる危うさが、腰の奥を圧力鍋で煮た骨みたいに脆くして砕くような快感に上乗せされる。
 さらに、アナルを伝った水をおいしそうにすすられるいたたまれなさが一松を甘く追い詰める。
 だがどうしようもない。退路は自ら断ってしまったのだから。カラ松が満足するまで耐えるだけだ。腰も足も崩れてしまいそうな、だがとどめにはならない快感に。地獄か天国かわからないが、思い出になれば確実に甘美。
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