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真昼の情事
第1章 うだる和室
吐息がかかるほどまで近づくと、人間の体が体温調節のために汗を出しているのだというのが肌に伝わってくる。空気が気化熱でむわりとする。
その、吐息をすくい取るように、カラ松がそっと舌を伸ばした。受け止めるように、一松が熱を逃がしていた唇をすぼめる。喉仏が期待で上下する。
二人、キスをしたことなど数知れない。それでも。
うだるような暑さが頭をおかしくしているのか、ほんの少しの動きが情欲を煽る。
カラ松の舌は、ギリギリのところで近づいてこない。
迎えに行くか、それとも。
逡巡ののち一松は、自分と逆側の頬に手を添えて、またカラ松の顎に唇をつける。ぢゅ、と吸い付き、れろ、と舐める。舌にざらりと髭が触れる。当然、しょっぱい。
喉の奥がうずく。舌を出したままのカラ松も、うずいていることだろう。
それでも、さっさと脱いでしまうのが惜しくて一松はお預けを課す。カラ松に、そして自分にも。
舌先の塩気を、一松は自分の唾液で薄めた。といったところで熱気を逃がしきれてはいない体だ。濃い。
そのどろっとした液体を舌に乗せて、添えていた手を掴む形に変えて、開かせた隣の男の口に流し込む。
無意識の一松の目に浮かぶ笑みに、カラ松は体の奥をいじられた。淫蕩な笑み。
流し込まれたものはほのかに苦かった。お互い見ないふりをしている、形を変えた性器を思わせる味だった。
あとで別のものを飲ませてもらおう。もっと苦くて、命の味のする、あれを。ずくん、と腰が重くなる。
カラ松はごくりと喉を鳴らして飲み下す。
「ほんとあんた、期待を裏切らないよね」
つん、と頬をつつかれ、ため息混じりの言葉にカラ松の体の芯の温度がまた上がる。
「恋人に期待されたら応えるだろう」
「それか裏切るかね」
「それもまた……な」
言葉を発すると、それだけで空気が変わる。限界まで高まったものが一旦リセットされ、そのあと限界値が押し上げられる。さらなる温度までいける。
そのことを、知っている。
一松がカラ松のこめかみを人差し指の背でなぞると、圧縮されたものが戻ってきた。