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恋はいつでも平行線【完結】
第26章 *二十六*
     *

 しゃん……しゃん……。
 聞き覚えのある音が遠くで聞こえる。
 それに合わせて、お腹に響く太鼓の音。
 空を引き裂くような、甲高い笛の声。

 聞き覚えのある音たちに、わたしの意識が浮上してきて──そして、思い出した。
 そうだ、これは奉納の舞いの時に奏でられるもので、青が言っていた時が来たようだ。

「柚希、起きた?」
「え……あ、うん」

 いつものように青は後ろからわたしを抱きしめて、一緒に布団に入ってくれていた。

「奉納の舞いが終わるまで、目が覚めなかったらよかったのに」

 それは、どういうことなのだろうと問いかける前に、青は起き上がるとわたしに覆い被さり、唇を塞がれた。
 最初から舌を絡められた、深いキスに、頭はまだぼんやりしているというのに、身体はいち早く反応して、ぴくりと身体が跳ねた。

「柚希、エロい」
「んっ、だ……って!」

 言い訳をしようとしたのに、青が唇を塞ぎ、それを許してくれなかった。
 くちゅりという音がして、それがますますわたしを煽った。
 そして、聞こえてくる奉納の舞いの音。

「ここの秋祭りの奉納の舞い、リズムが独特だと思わない?」

 独特なのかどうか、昔からこれしか知らないわたしには判断がつかなくて返答に困っていると、青が煽るように耳たぶを食んできた。

「ぁ……んっ」

 しゃしゃん……かんっ、しゃん。

 わたしの耳には、なじみ深い音がうっすらと聞こえてきた。

 奉納の舞いは、神田家本家の庭で行われるため、奥院にいてもよく聞こえる。
 本来ならば神社で行われるはずであるのだけれど、奉納の舞いだけ神田家本家の庭でされるのには、奥院の奥にある、井戸の水に聞かせるためだ──と聞いたことがあった。

 その話に、わたしは不思議に思った。

 水には耳があるのだろうか、と。

「音は、空気を震わせる波動。ここだと、水にも振動が伝わって、よく”聞こえ”るんだよ」
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