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恋はいつでも平行線【完結】
第3章 *三*
「寝起きのけだるげな表情で、伏し目がちに恥ずかしそうに説明されて、それで『はい、そうですか』と引けると思ったのか」
「えっ、な、なんでっ!」

 いやそこ、わかったと言って部屋を出ていくところだよね?
 説明したのは間違ってたっ?

「今の話を聞いている限り、別に処女じゃなくてもいいんだろう?」
「……は?」

 祖母からも別にそういうことを言われたことはないけれど、それよりもどうして臣哉はわたしが処女だって知ってるのっ?

「それに、なにかで読んだことがあるんだが」
「…………」
「男女が愛した後の混合液も、なにかの儀式に使えるらしいぜ」
「はっ?」
「なに、病気の心配はするな。オレはこのとおり、童貞だ」

 臣哉は胸をはってそんなことを言ってくれたけれど、どこから突っ込めばいい?
 しかも、混合液ってなによそれ!

「いいから、オレの脱童貞に付き合え」
「え、な、ちょっと! あんたとなんて嫌よ!」

 いくらよく知っていて、見た目がいいからって、どうして仕事仲間とそういうことをしないといけないわけっ?

「四の五のいいから」

 いや、よくないって!

 わたしは慌てて臣哉から離れようとしたけれど、すでに腕をつかまれていて、逆に力強く引き寄せられた。
 白いTシャツ一枚の臣哉の胸に抱き寄せられ、薄い浴衣一枚のわたしの皮膚は、臣哉のぬくもりを思いっきり拾った。
 温かい、を通り越して、暑いと感じるくらいの臣哉の体温。

「はー、おまえも女だったんだな。すげー柔らかくて、いい匂いがする」

 普段、臣哉がわたしのことを女扱いしていないのは知っていた。むしろ、そう思われているほうが気が楽だった。
 だから、改めてそんなことを言われると、戸惑うばかり。

 わたしの腕をつかんでいた臣哉の手がするりと肩へとすべりあがったかとおもったら、ぞくりとしたしびれが背中を這い上がった。
 あ、やだ、これ……!

「……ぁ」

 思わず洩れた声に、臣哉が耳元でくすりと笑った。その息が耳をくすぐった。

「んっ、ゃぁ」
「なかなかいい声で啼くな。もっと乱したくなる」
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